▲北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長/労働新聞、news1

 北朝鮮は昨年、軍事偵察衛星「万里鏡1号」の発射に成功したが、偵察衛星としての機能は発揮できていない。ところが今回北朝鮮はこの万里鏡1号の能力を誇示した。米原子力潜水艦(SSN)「バーモント」が補給と乗組員休息のため釜山の海軍作戦司令部に入港したが、これについて北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が24日の談話で「国家首班直属の独立情報機関である航空宇宙偵察所が23日10時3分10秒に異常物体(バーモント)の釜山港埠頭出現を捕捉した」と主張した。

 金与正副部長は「米国の戦略資産(兵器)は朝鮮半島地域で自分たちの安息場所を見いだせないだろう」「韓国の全ての港と軍事基地が安全な場所になり得ない事実を今後も知らしめていく」とも警告した。バーモント入港を捕捉した時間を秒単位で公開し、それにより韓国の主要な軍事施設を監視中と主張したのだ。韓国軍筋によると、バーモントは実際に10時頃釜山の埠頭に接岸したという。

 韓国軍当局は万里鏡1号について「偵察衛星としての機能を発揮できていない」と評価しているが、今回の北朝鮮の発表はこの評価とは食い違っている。今年2月に韓国国防部(省に相当)の申源湜(シン・ウォンシク)長官(当時)は「万里鏡1号が軌道を回っているシグナルを正常に受信した」とする一方「何もやらずただ回っているだけだ」と指摘し、軍事偵察衛星としての任務は正常に果たせていないと評価した。ただし金与正副部長の主張とは異なり、北朝鮮はバーモントの衛星写真などは公開しなかった。

 韓国軍当局は「北朝鮮はメディアの報道などを通じてバーモント入港の時期を推定した」と見ている。つまり監視偵察能力を持つとする北朝鮮の主張は「はったり」ということだ。バーモントの入港について韓国メディアは23日午前10時45分頃にはじめて伝えた。米軍艦艇が釜山作戦基地に入港する際、その時間は多くが午前9-10時の間で、北朝鮮はここから逆算した可能性が高いという。バーモントは9時30分頃に釜山作戦基地に入り10時頃に接岸したが、北朝鮮はこのような具体的な動きには言及しなかった。

 上記の韓国軍筋は「秒単位まで具体的に言及したが、北朝鮮がこれを独自の監視資産によって入港を把握したのであれば、韓国メディアが報道する前に公表するか、あるいは衛星写真も同時に公開したはずだ」と指摘した。別の韓国軍関係者も「具体的には明らかにできないが、北朝鮮の偵察衛星から情報が伝わったとは考えられない根拠もある」と説明した。峨山政策研究院の梁旭(ヤン・ウク)研究委員は「北朝鮮は自分たちの偵察衛星では米軍潜水艦を捕捉できないだろう」「スパイやネットの情報などから時間を把握した可能性が高いと考えられる」との見方を示した。

 一部では北朝鮮がロシアの偵察衛星などから入港時間を把握した可能性も指摘されている。しかし韓国軍当局はこれまで北朝鮮とロシアの軍事協力について「軍事偵察衛星の情報を共有するレベルではない」と判断している。

 韓国軍は昨年5月に北朝鮮が発射に失敗した万里鏡1号を海底から引き上げ、その際北朝鮮は万里鏡1号に商用のデジタルカメラを地上観測用に搭載していたことがわかった。これは「グーグルアース」よりも解像度が低い。この結果、当時韓国軍合同参謀本部は「偵察衛星としての軍事的効果はない」との評価を下した。

 今回金与正副部長は原子力潜水艦(SSN)のバーモントを「戦略資産」と呼び、核攻撃が可能な「弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)」と主張した。これについて上記の韓国軍筋は「攻撃型原子力潜水艦(SSN)を弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)と同じものとごまかし、緊張を高め次の挑発の大義名分を積み上げているようだ」と指摘した。

ヤン・ジホ記者

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