韓国の株式市場が中国、インド、台湾など新興国と比べても存在感を示せない理由は、海外の投資家から注目を集める魅力的な企業が不足しているためだ。ここ20年余り、韓国経済で大きな比重を占めてきたサムスン電子、現代自動車のような大企業に追随する第2、第3のグローバル企業を育成できなかった「未来成長企業の不在」が定着してしまっているのだ。サムスン電子の独走が慢性化し、半導体株にピーク説がささやかれるたびに韓国の株式市場ばかりか経済全体まで揺らいでしまう。さらに後進的な企業支配構造、現在論議を呼んでいる金融投資所得税など株式市場が低評価される要因も依然として存在する。

■時価総額25年連続とトップのサムスン電子、年初来21%安

 韓国取引所によると、韓国株で時価総額1位の半導体大手、サムスン電子の株価は年初来約21%下落した。悲観的な業績見通しを受け、外国人が同社株を集中的に売り越しているからだ。9月の月初から20日までの外国人による売り越しは5兆9210億ウォン(約6400億円)に達した。同社の第3四半期(7~9月)の業績もスマートフォンやパソコンの需要低迷などで期待を下回るとの見方が相次ぎ、韓国証券業界10社は9月に同社の目標株価を10~26%引き下げた。

 MSCI エマージング・マーケット・インデックス(新興国指数)に組み入れられた産業の割合が20年間で大きく変わったことも、海外の機関投資家にとっては、韓国の株式市場の魅力を低下させる要因となった。2004年にはMSCI同指数に占める韓国株の割合は18.67%だったが、現在11.67%に低下した。同じ期間、IT銘柄の組入比率は16.69%から24.24%に上昇した。ところが、サムスン電子の不振を補完すべき韓国の大手IT企業(カカオ、ネイバー)は、経営権問題、新規事業不在などで成長が停滞した状態だ。

■選手交代した台湾、インド

 韓国とは異なり、台湾、インドなどは株式市場を代表企業が入れ替わる好循環が起き、経済に活力を吹き込んでいる。

 台湾経済はコロナを契機として、アップルの最大の生産委託先で一時は「台湾のサムスン」と呼ばれた鴻海精密工業から人工知能(AI)用半導体の受託生産企業である台湾積体電路製造(TSMC)に成長動力がシフトした。一時、鴻海は台湾の域内総生産(GDP)の22%を占める圧倒的なトップ企業だったが、コロナ後はTSMCにその座を譲った。TSMCの株価は年初来23%急騰し、台湾株の上昇をけん引した。

 台湾経済を主導する企業が鴻海からTSMCに変わり、対中依存度が低下したことも、台湾経済の体質改善に役立った。台湾はイノベーション企業の育成にも積極的だ。台湾専門家の王樹鳳・亜洲大教授は「台湾は法人税率(20%)が韓国(24%)より低く、さまざまな減免で実効税率も低い。TSMCのような先端未来産業に対する政府の規制が相対的に少ない」と話した。

 インドは中国より人口が多く、堅調な内需を土台に流通企業や金融業などが新たに産業を主導している。韓国投資信託運用のヒョン・ドンシク海外ビジネス本部長は「中国の成長戦略を模倣したモディ政権の製造業育成政策である『メイク・イン・インディア』の後押しで中国のような成長を再現させる可能性が高い。今後も建設、金融などの分野で新たな企業が登場するのではないか」と話した。

 内需市場が堅調なインドでは、石油・通信大手のリライアンス・インダストリーズ、財閥タタ・グループ所属のIT企業、タタコンサルタンシーサービスの株価が年初来それぞれ13%、12%上昇した。これら有望株だけでなく、インドの金融大手ICICI銀行が時価総額4位に浮上するなど株式市場の躍動性が高まった。

■企業支配構造、金融投資所得税など韓国株の低評価要因依然

 韓国では次世代の成長産業が不在であるばかりか、コリアディスカウント(韓国株低評価)を解消する上で、企業支配構造も解決すべき課題として挙げられる。アジア企業統治協会(ACGA)は昨年、韓国の企業支配構造の順位をアジア12カ国・地域で8位と評価した。日本(2位)はもちろん、香港・インド(6位)より低い。ACGAはアジアの企業統治環境を改善するために1999年に設立された非営利団体だ。

 ACGAのアマル・ジル事務局長は「韓国で企業支配構造を改善するための政府のロードマップが存在しないことは問題であり、株主の権利を強化するための立法が遅れている」と指摘した。来年に金融投資所得税が導入されるかどうかが決まらず、韓国株式市場から機関投資家が離脱するなど、株価下落の懸念要因も依然残っている。

キム・スンヒョン記者、李恵云(イ・ヘウン)記者

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