▲グラフィック=朝鮮デザインラボ キム・ヨンジェ

 仕事が楽な割に給料が良く、福祉水準も高いとされてきた中国の地方公務員たちが最近、大打撃を受けています。さまざまな手当や補助金が削減、廃止されたほか、月給が10~30%削られ、旧正月と年末に出てきた成果給も支給中断が続出しているそうです。国策金融機関の中には支給済みの賞与を返納させるところもあるといいます。

 緊縮財政のために支出を抑えろという注文も相次いでいます。安徽省政府と江蘇省蘇州市政府は7月初め、夏の室内温度26度以上の維持、公務接待時の構内食堂利用、公用車8年25万キロ使用などの指針を管内の自治体に通達しました。

 状況がここまで悪化したのは、不動産バブル崩壊による地方政府の税収減が主な要因です。 中国の地方政府はこれまでマンション用地を建設業者に売却した収入で予算の40%以上を調達していましたが、不動産市場の低迷で売却収入が大幅に減り、財政が根本から揺らいでいるのです。給料に充てる資金がない一部地方政府が管内の寺に借金をしているという話まで伝わっています。

■国有地売却収入、バブル崩壊前に比べ56%減

 今年上半期の中国の国有地売却収入は1兆5263億元(約24兆9400億円)で前年同期を18.3%下回りました。不動産市場の低迷が本格化する以前の2019年上半期と比べると、減少幅は55.7%に達します。

 2021年に土地売却収入が地方政府の財政収入に占める割合は42.5%に達しました。財政収入の半分近くを占める土地売却代金が55%以上も減れば、地方政府は健全な財政を維持できるはずはありません。広東省、浙江省、江蘇省など経済発展が進んだ沿岸部が最も大きな打撃を受けたとされます。

 実は中国地方政府の財政難は昨年から既に始まっていました。数カ月間も賃金を遅配したり、賃金をカットしたりする地方政府が続出しました。

 昨年9月、吉林省長春市九台区では退職教師に対する年金支給が滞り、元教師らが市政府庁舎に押しかけて抗議する騒ぎが起こりました。山東省浜州市傘下の地方政府では8カ月も賃金を支給できなかったところもあります。南京市高淳区政府も昨年8月、月給を払えず、近隣の江寧区政府から資金を借りて賃金を支給したというニュースがソーシャルメディアに掲載されました。

■中国政府、消費税の地方移転など対策に苦慮

 北京に近い天津市でも一部自治体の財政が枯渇し、公共交通、清掃などを担当する政府機関の職員に給料を支払えなくなりました。住民は自由アジア放送(RFA)のインタビューに対し、「天津市では河北区など少なくとも4つの自治体は財政が厳しく、数カ月間給料を払えない状況だ。ある公務員が管内にある大慈寺の住職に賽銭を借りようとしたが、寺側も事情が厳しいとして断ったという」と話した。

 状況は今年に入ってさらに悪化しています。ポータルサイト「網易」では、あるブロガーは7月初め、「匿名を要求する上海財政局のある職員が上半期の財政報告書の収支を合わせるため、市内の静安寺、竜華寺、玉仏寺などの寺院から100億元の短期資金を借りたと語った。うち正安寺が48億元で最も多額の資金を貸した」と投稿した。上海市の財政当局は直ちに「フェイクニュース」だと否認しましたが、資金源が途絶えた地方政府が寺院からお金を借りているという情報が絶えません。

 中国政府も地方の財政難を認めながら、解決策づくりに乗り出しています。中国共産党は今年7月、習近平政権3期目の経済政策を提示した中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)の決定文で、「消費税を段階的に地方政府に移転する」としました。李強首相は今年3月の全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告で「各級政府はコスト削減に慣れなければならない」と指摘しています。

■超緊縮財政「接待も構内食堂で」

 消費税は増値税(付加価値税)、企業所得税、個人所得税と並び中国の4大税目に挙げられます。酒類、たばこ、化粧品、貴金属、宝石、燃油、車両、ゴルフクラブ、高級時計、ヨット、電池などが課税対象です。主にぜいたく品や環境汚染の要因となる商品が課税されます。

 中国の4大税目のうち、残る3つは中央政府と地方政府が分配していますが、消費税は全て中央政府の歳入となっています。地方政府の財政難を解消するため、その消費税の一部を地方に移転しようというのです。昨年の消費税収は1兆6100億元で、中国の税収全体の8.9%を占めました。

 中国は税収全体の45%を中央政府、残る55%を地方政府で分け合う構造です。しかし、財政支出は地方政府が全体の85%を占め、はるかに多いのが現状です。教育、医療、養老年金など一般国民の生活と直結する支出は全て地方政府の役割です。消費税を一部の地方に移譲したとしても、不動産問題が解決されない限り、財政難を解消するのは容易ではない状況と言えます。

 地方政府はさまざまな対策を打ち出しています。蘇州市政府は高速鉄道が整備された地域に出張する際に公用車の使用を禁止し、公務上の接待も構内食堂を使うように指示したといいます。安徽省政府は冬の暖房温度を20度以下、夏の冷房温度を26度以上とするよう通達しました。陝西省政府はオフィスのインテリア禁止令を出し、湖南省政府は公用車を8年、25万キロ以上使用するよう指示したということです。

崔有植(チェ・ユシク)記者

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