社説
開校20年を迎える脱北青少年向け学校、歓迎ではなく忌避する韓国社会【9月24日付社説】
北朝鮮から逃れてきた脱北青少年のための代案学校(オルタナティブスクール)「黎明学校」が今月27日に開校から20年を迎える。言語や文化の問題で一般の学校に適応できない脱北民の中高生たちを支援するため、23の教会が協力してソウル市冠岳区奉天洞の商業ビルに20年前に開校した。その後は紆余(うよ)曲折の末2回移転し、現在は昨年8月に江西区の廃校した小学校跡地で臨時運営されている。ところがこの廃校には近く別の施設が入る予定で、2026年2月までに施設を明け渡さねばならないという。学校側によると次の移転先はまだ見つかっておらず、関係者は支援を呼びかけているようだ。
この問題が容易に解決しない理由は、一部地域住民が自分たちの近所への移転に反対しているからだ。黎明学校は2019年に運動場付きの校舎を建設しようとしたが、これに反発する横断幕が敷地内に設置され、区庁にも「来させるな」など抗議の電話が相次いだという。不動産価格にマイナスの影響を及ぼすとされたのがその理由だった。黎明学校の当時の教頭は「ひざまずいてくれる母親もいない脱北民の子供たちはどこに行くべきでしょうか」という題目の文書を青瓦台(韓国大統領府)の国民請願掲示板に掲載したが、それでも住民の反対が収まることはなかった。その後は今の場所に臨時で移転しているが、近隣住民を刺激しないため移転作業は深夜に行い、学校の看板も設置していない。
しかし学校をソウル以外に移転することはできない。黎明学校は脱北民のための中学・高校としてソウル教育庁だけが認可し、卒業すれば高卒の資格が認められる。しかし移転先をソウル市以外にすればソウル教育庁から受けた正規の学歴認定が取り消される。そのため学校としてはどうすることもできないのが現状だ。
これまで黎明学校は400人以上の卒業生を輩出し、中には教員採用試験に合格した教師や看護士もいるという。今もおよそ100人の生徒が中学と高校で勉強を続けているが、中には両親がいない、あるいは片親しかいない生徒も少なくない。中国などで長期にわたり隠れ住んでから韓国にやって来たため、韓国語に不自由する生徒たちも多いという。黎明学校はそのような生徒たちが韓国社会に適応し、大韓民国国民として生活を送れるよう支援する教育施設だ。生徒が犯罪行為に走った事例も確認されていない。このように必要とされる良いことをする学校を忌避施設と考える一部地域住民の認識がまずは変わらねばならない。ソウル教育庁や自治体も問題解決に向け積極的に動いてほしい。