韓国と中国を経験したある外資系企業の現地法人トップは「両国の労組文化が競争力に大きな差をつくっている」と指摘。「経営戦略や製品の一部仕様、作業方式を変更したい場合、韓国では労組との交渉に時間を消耗するが、中国の勤労者は異議を唱えずに直ちに受け入れる」と話した。その上で、「韓国は経営陣が労組との交渉するために精根を使い果たすが、中国では労組関連業務が占める比率はゼロだ」とも指摘した。

 企業関係者の多くは韓国とは対照的とも言える「迅速な意思決定」も重要な革新の秘訣として挙げた。韓国の流通業者はかつて中国でテレビ通販事業で独走していたが、インターネットを使った電子商取引(EC)への投資時期を逃し、チャンスを失ったケースは代表的だ。現在韓国の流通企業は中国での通販事業からほとんど撤退し、GSリテールだけが残っている状態だ。流通業界のある現地役員は「中国企業などはテレビ通販を飛ばし、直ちにECに投資し韓国企業を追い越した。しかし、韓国企業はECに転換するかどうかを決めるのに1年を要し、投資時期を逃した」と振り返った。

 中国の航空会社は繁忙期に航空運賃を8倍まで引き上げ、収益を極大化するが、韓国の航空会社は意思決定プロセスで繁忙期を逃しているとの意見もあった。ある航空業界の中国法人役員は「中国の航空会社は繁忙期には料金を500元から4000元まで引き上げる。韓国では意思決定が遅れ、繁忙期が終わってしまう」と話した。

■生き残った10%が90%の技術を吸収…政府は事後規制

 自動車業界の現地法人トップによると、中国では工場用地などに対する政府の直接的支援で多くの企業が設立されるが、約90%は完成車を作ることもできずに淘汰される。それでも生き残った10%の企業が消えゆく企業から技術を蓄積した高級人材を吸収し、強力な企業が誕生する。中国電気自動車(EV)最大手の比亜迪(BYD)や電池世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が代表例だ。ある自動車部品メーカーの現地法人トップは「BYDはコスト、技術、スピードを理念とし、6カ月ごとに部品別納入業者をコストを基準に変更しながら、部品生態系の革新を促進している」と述べた。

 中国政府が技術と産業が成熟するまで規制をせず、市場が成熟するか副作用が生じた時点で市場介入を始める点も奏功しているもようだ。中国は米国と同様、新産業分野はひとまず許容し、副作用が生じれば規制をつくる「ネガティブ規制」方式を採用している。

 自動車部品メーカーの現地法人トップは「中国ではある程度技術が開発されると、すぐに市場に投入して市場の反応を見ながら技術改良を行うため、新技術とスマート化の進展が非常に速い」とし、「韓国では技術開発だけを主に行い、規制が多く、技術改良が遅く、市場投入には長い時間がかかる」と弱点を指摘した。

 新技術に対する思い切った支援と試行錯誤を容認する文化もプラスになっている。化学業界の役員は「中国の場合、新素材、量子コンピュータ、人工知能(AI)などを戦略的に支援する。設立初期の企業は保険から投資額の80%程度を支援してくれるので、思う存分試行錯誤を行って成長する」と話す。

 銀行の現地法人トップは「中国最大のメッセンジャー『微信(ウィーチャット)』の成功の秘訣を見れば、中国政府の新産業育成戦略を垣間見ることができる」と指摘した。微信は手数料なしで口座振替ができる事業に参入し、都市銀行の顧客を囲い込んだ。中国の5大銀行が反発しているにもかかわらず、中国政府は微信が成功を収めるまで黙認。2017年になってようやく微信の資金管理を銀行に委託するよう規制した。微信は銀行業務はできなくなったが、その代わりにそれまでに獲得した10億人のユーザーに対する広告など他の事業で成功することができた。スタートアップが独り立ちする基盤を整えるまで待って、規制を始めるのだ。

柳井(リュ・ジョン)記者、ソ・ユグン記者、チョ・ジェヒョン記者

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