▲グラフィック=キム・ハギョン

 忠清北道清州市に住むイ・ヒョンジンさん(29)は昨年夏、初めて球場に足を運んだ。「名前が同じ柳賢振(リュ・ヒョンジン)を見に行こう」という友人の言葉に思わず付いて行った。イさんは「初めていったが、とても面白かった。「チキンとビール」を楽しみながら、応援歌に合わせて歌ったり踊ったりと、最高のお祭り気分だった」とし「その後、5回は球場に行って直接試合を観戦した。柳賢振のユニフォームも買った。これからも球場に行くつもり」と笑みを浮かべた。

 韓国プロ野球が発足から42年目にして、初めて観客動員数で1000万人を突破した。今シーズンの開幕から9月17日まで、延べ1014万4279人がプロ野球の球場を訪れた。以前の最高記録(2017年、840万688人)はすでに先月18日の時点で超えており、1カ月で1000万人の大台を突破した。10球団のうち、KIA、三星、LG、斗山、SSG、ロッテの6球団が今シーズン100万人(本拠地での観客動員数基準)を突破した。

 このように観客動員数が爆発的増加に至ったのは、試合そのものの要素としては前例のない熾烈(しれつ)なペナントレースが挙げられる。シーズン終盤までポストシーズン進出を懸けた激しいデッドヒートが続いたおかげで、各球団のファンたちは最後までかたずを飲んで見守った。レギュラーシーズン終了を10日後に控えた状況で、1位のKIAのほかは「ポストシーズン」進出を決めた球団はまだいない。若いスター選手たちの誕生も大きく影響した。歴代最年少で30本塁打・30盗塁を達成し、MVPを事実上確定しているKIAのキム・ドヨン(21)、高卒新人のセーブ記録を塗り替えたキム・テギョン(18セーブ)など「若い選手たちが飛躍的な成長を見せ、若くて新しいファンが多く流入した」(イ・スンチョル解説委員)との声が上がっている。

 試合以外の要素としては、野球が勝敗の垣根を越え、一種の外出や娯楽のように消費される文化が拡大したという点が挙げられる。特に、米国や日本でも見られない楽しい応援文化は、球場を「祭りの場」として創造し、若いファンたちを魅了している。観客に球場で最も印象に残った場面について質問すると、43.2%が応援文化を挙げるほどだ。ラッパと太鼓で同じ応援歌を演奏する日本や、好きな選手にだけ声援を送る米国とは違い、韓国には選手ごとに異なる応援歌やスローガンが存在し、それぞれの球団のチアリーダーが登場しては試合を盛り上げてくれる。「歌はイム・ヨンウン、野球はキム・ヨンウン」「リーグトップの高山病はホントにつらい」など、観客が才気あふれる応援文句をこぞって作り上げ、こうした文句がテレビで放送されることで、オンラインで「ミーム(meme)」として再生産されている。最近、KIAのチアリーダーたちの応援ダンスである「ピキピキ・ダンス」が全世界的に話題となり、「K応援」が新たなアイテムとして脚光を浴びている。

 女性ファンの増加は、錦上添花(良い事の上にさらに良い事が起こること)のような効果だ。KBO(韓国野球委員会)が調査した結果、初めて球場を訪れたと答えた回答者のうち、女性が占める割合は48.6%となった。これまでは観客の37.2%が女性だったが、今年は女性ファンが大幅に増えたということになる。これら「新規の観客」のうち20代が31.4%、未婚が53.2%を占め、若いシングル世代が球場に多く流入したことが分かった。

 斗山のハム・テス広報チーム長は「若い女性ファンはチームよりも自分が好きな選手を一生懸命に応援するので、勝っても負けても球場を毎回訪れる」とし「アイドル・ファンダム(Fandom、熱狂的なファン集団)に負けずとも劣らない情熱を持っている」と話す。このような若い女性ファンは「アイドルのコンサートチケットは手に入りにくく、各種『グッズ(記念商品)』の値段も法外に高い一方で、野球選手は毎日球場に行けば見ることができ、チケットの値段も1万-2万ウォン(約1100-2200円)と手ごろ」と説明する。各球団も、こうした熱烈的なファンの好みに合わせ、試合後の選手たちの様子、日常生活、トレーニングの様子などを動画に盛り込み、ユーチューブにアップするなど、関心を持ってもらえるよう努めている。さまざまなバージョンのユニホームの発売も、アイドル文化からヒントを得た結果だ。

ペ・ジュンヨン記者、ヤン・スンス記者

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