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17世紀日本の権力闘争を描いた米ドラマ『SHOGUN 将軍』、エミー賞18部門席巻
米国ロサンゼルスのピーコック・シアターで今月15日に開かれた権威ある放送賞、エミー賞の主人公は、ドラマ『SHOGUN 将軍』だった。17世紀の日本を舞台にしたこのドラマは、出演陣やせりふは日本人・日本語だが、米国企業が制作し、2月に米国のOTT(オンライン動画サービス)大手「Disney+」を通して配信された。ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のケーブルチャンネルFXが制作した同ドラマは、エミー賞で、単一作品としては歴代最多となる18部門を受賞した。作品・監督・主演男優・主演女優など主な部門も全てさらっていった。NHKは「せりふのほとんどが日本語の作品が米国でこれほど多くのトロフィーをつかむのは異例」と報じた。『SHOGUN 将軍』の躍進は、日本語で語られる日本の物語が米国資本で制作される最近のトレンドを反映した結果だという分析がなされている。
『SHOGUN 将軍』は、17世紀の日本における、征夷大将軍の座を巡って権力者の間で繰り広げられた政治・武力対立が題材。こうした対立を、太平洋を漂流してたまたま日本に流れ着き、定着した英国人航海士「ジョン・ブラックソーン」の視点から描いた。1975年に出版された作家ジェームズ・クラベル(1921-94)の同タイトルの小説が原作で、1980年に米NBCがドラマ化した。米・日双方の資本が入っていた当時のドラマは、せりふの大部分が英語で、日本語が出て来るときは「ブラックソーンの視点」だからという理由で字幕も付けず、米国の視聴者は日本語のせりふを「音響効果」のように聞かなければならなかった。その後、日本ではテレビ朝日が英語のせりふに日本語の字幕を付けて放映した。
1970年代の原作小説とドラマは高い人気を集めた。だが、日本の戦国時代を舞台にしていながら、物語の焦点が過度に英国人航海士に偏っている、とも評された。武士など当時の日本文化を、オリエンタリズム(西洋が偏見を持って東洋を低く見ること)の視線で誇張して描写している、という指摘もあった。反面、今年のドラマは、英国人航海士を演じた俳優コスモ・ジャーヴィスを除くと主演・助演から端役に至るまでほとんど日本人が演じ、内容の展開も当時の権力者を中心としたものだった、と現地メディアは報じた。せりふは70%以上が日本語で、英語の字幕でも見ることができる。
主人公「吉井虎永」を演じた真田広之(63)は制作にも関与しており、真田は「日本人が見てもおかしくない日本を描こう」という原則にこだわったという。衣装・小道具・せりふの一つ一つを検討し、違和感があればすぐに修正するという方式だった。真田は8月、読売新聞の取材で「誤解された日本を描く時代を終わらせたかった」と語った。18日に日本人として初めてエミー賞の主演男優賞を取った真田は「今回の作品は東(東洋)と西(西洋)が壁を越えて互いを尊重する夢のようなプロジェクトだった。世界と本当に通じ合う日本の時代劇を作り、うれしく思う」と語った。
今年のエミー賞では、『SHOGUN 将軍』だけでなく、江戸時代を舞台にしたNETFLIXアニメ作品『BLUE EYE SAMURAI/ブルーアイ・サムライ』(昨年11月配信)がアニメ部門賞を取った。17世紀の日本を舞台とし、日本語のせりふを基本にしたという点は『SHOGUN』と似ている。このアニメ作品もまた米国の制作チームが作り、粗筋も米国人が書いた。公演文化の聖地、英国ロンドンの「ジリアン・リン・シアター」では来年4月、アニメの巨匠・宮崎駿の『となりのトトロ』が演劇として披露される予定で、米国ハリウッドでは1982年から90年にかけて連載されたSF漫画『AKIRA』の実写版制作が最近決まるなど、英米圏資本の日本コンテンツ制作は増える傾向にある。NHKなど日本メディアは「西洋エンターテインメント業界で多様性が強みとして位置付けられたことを示す」と報じた。
日経新聞は、22年にNETFLIXの韓国ドラマ『イカゲーム』がエミー賞で監督賞・主演男優賞などを受賞したことに言及しつつ「今年の『SHOGUN 将軍』のヒットは韓国ドラマの躍進が土壌となった」と伝えた。エミー賞にはもともと、米国のテレビで放映された作品しかノミネートできなかったが、NETFLIX・Disney+などOTTの拡大後は、テレビ放映されていなくても米国企業が制作に関与していればノミネート資格を満たしたとみなしている。
金東炫(キム・ドンヒョン)記者