▲スウェーデンのサーブJAS39C/Dグリペン戦闘機。タイは、古くなったF16を代替する戦闘機としてこの機種を選んだ。/朝鮮日報DB

 欧州の代表的な親中国家であるセルビアが、古くなったMiG29を代替する戦闘機としてフランスのラファールを選び、中国は腹が煮え返っている雰囲気です。これまで中国は自国製のJ10C(殲10C)輸出のため力を入れてきましたが、信用していた相手に裏切られたのです。ソーシャルメディアには「性能も対等で価格は4分の1という安さなのに、どうして鉄盟だという国がラファールを選ぶのか」という書き込みまでありました。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は8月29日、1泊2日の日程でセルビアを国賓訪問し、アレクサンダル・ブチッチ大統領と首脳会談を行いました。ブチッチ大統領は首脳会談直後の記者会見で、ラファール戦闘機の購入契約を公式発表しました。

 中国のJ10Cは国際舞台の受注戦で連戦連敗を喫しています。J10CとスウェーデンのJAS39グリペンの間で悩んできたタイも、8月27日に「グリペンを購入する」と発表しました。習近平主席まで乗り出して力を入れていたサウジアラビアも昨年末、フランスのラファール戦闘機を買うと決定しました。

■東欧の代表的な親中国家

 バルカン半島の内陸に位置するセルビアは、ハンガリーと共に、東欧の代表的な親中国家といえます。中国の「一帯一路」プロジェクトに積極的に応じてきており、昨年はブチッチ大統領が中国を訪問して中国と自由貿易協定(FTA)を締結しました。習主席も今年5月、フランス訪問の直後にセルビアを答礼訪問しました。

 セルビアは、中国産の兵器の輸入国でもあります。最近はHQ17AE(紅旗17)近距離防空システム、FK3中・長距離防空ミサイルなどを中国から購入しました。

 セルビアは今回、12機のフランス製ラファール戦闘機を27億ユーロ、およそ30億ドル相当(現在のレートで約4300億円。以下同じ)で配備すると発表しました。1機当りの価格は2億5000万ドル(約360億円)になります。東欧の小国セルビアは、旧ソ連から購入したMiG29戦闘機14機が空軍の主力です。今回の契約で、2028年からラファール12機が配備されれば、MiG29は全て退役するといいます。

■高価でも検証済みのラファールを選ぶ

 中国はこれまで、複数のルートを通してセルビアにJ10Cを購入するよう打診し、破格の価格も提示したといいます。しかしセルビアの最終選択はラファール戦闘機でした。

 J10は、米国の小型・多目的戦闘機F16を意識して作った単発戦闘機で、2005年に実戦配備されました。胴体の大きさや離陸重量などはF16と同等です。

 J10Cは、初期モデルを改良して18年に登場したタイプで、アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーなど最新の電子装備を搭載したといいます。ただし、F16・ラファールなど競合機種より武装搭載量は少なく、実戦経験がないというのが弱点です。1機当りの価格は6000万ドル(約86億円)ほどで、ラファールよりはるかに安値です。

 ラファールはインド、エジプト、カタールなどに輸出されたフランスの主力戦闘機。小型の機体ながら武装搭載量や機動性に優れ、空対空・空対地・空対艦などさまざまな役割を遂行できるのが強みです。リビア爆撃、アフガニスタン戦争、IS(イスラム国)攻撃などに投入され、実戦で性能は検証済みという評価を受けています。

■合同演習パートナーのタイはグリペンに決定

 親中・親ロ路線を歩むセルビアがJ10Cではなくラファールを選択するに当たっては、政治的な理由も作用したものとみられます。セルビアは09年に欧州連合(EU)加盟を申請しましたが、コソボ紛争、国内の民主主義および法治問題などにより、加盟手続きに進展がない状態です。こうした状況でEUの盟主であるフランスの助けを得るため、戦略的にラファールを選んだという分析がなされています。

 親中路線を歩んできたタイがJ10Cではなくスウェーデンのグリペン戦闘機を選んだことも、中国としては痛いところです。中国とタイは15年から毎年、合同空軍演習を行ってきていますが、中国は数年前からJ10Cをこの合同演習に投入してきました。タイが1980年代に配備した古いF16に代わる戦闘機の導入を始めたことを受け、J10Cの販促に乗り出したのです。

 今回の受注戦では、米国ロッキード・マーチンのF16V、スウェーデンのグリペン、中国のJ10Cが競争しましたが、タイはJAS39グリペン戦闘機に決めました。J10Cは昨年のサウジアラビア受注戦でも、フランスのラファール相手に苦杯を喫しました。

■ジェットエンジンの性能、信頼性が低いJ10シリーズ

 今のところJ10戦闘機を購入した海外の国は、中国が「鉄盟」に挙げるパキスタンが唯一です。計36機を販売することとし、このうち10機ほどを引き渡しました。

 中国の戦闘機が世界の舞台で敬遠されるのには、幾つか理由がありますが、最も大きいのはやはり中国製ジェットエンジン(WS10/渦扇10)の性能と信頼性の問題です。以前より出力は上がりましたが、出力の持続性、燃料効率などの側面で問題があるといいます。

 6トンに満たない武装搭載量も問題だといいます。多目的戦闘機であるためには、さまざまな武装を搭載できなければなりませんが、搭載量が少ないと制限を受けることは避けられません。追加の燃料タンクがなく、作戦距離は短いといいます。F15とF16、J10Cに乗ったことのあるパキスタン空軍のパイロットは、ある軍事専門誌への寄稿記事で「レーダーの探知能力も良く、機動性も悪くない方だが、武装の搭載量が少なく、出力が急に落ちる問題がある」として「もっと強いエンジンに交換しないと問題は解決できないだろう」と指摘しました。

崔有植(チェ・ユシク)記者

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