▲写真=UTOIMAGE

 最近、中国で外国人を対象にしたヘイトクライム(憎悪犯罪)が相次いでいる。経済が伸び悩んでいる中、外国人投資が減少している状況を懸念する中国当局は当惑している様子だ。

 中国共産党機関紙「人民日報」傘下のメディア「環球人物」によると、7日、清代の離宮で中国の有名観光地となっている「円明園」で、日本人観光客2人が災難に遭ったとのことだ。

 ショート動画交流サイト(SNS)で32万人のフォロワーを抱える「亜人」というインフルエンサーは日本人観光客に暴言を吐く動画を掲載した。日本人観光客のガイドが「亜人」に「写真を撮るからちょっとどいてほしい」と要求したのが事の発端だった。

 「亜人」はこれを拒絶し、「お前らは日本から来たのか? たった今、日本語を聞いたが、日本人なのか?」と聞いた。そして、日本人だと知ると、「亜人」は「オレに向かって、日本人のために『どけ』と言っているのか」と怒った。ガイドが「頼むこともできないのか」と聞き返すと、「この円明園でそんなことを言ってはならない」と答えた。円明園には1860年に外国の軍隊によって破壊された跡が残っている。

 「亜人」のこじつけの主張で管理所の職員がやって来たが、さらに過激な反応をした。管理所の職員は「(日本人は)入れない。日本人を憎んでいる。あいつらを追いやることに私も賛成だ」と言った。

 同メディアは「動画が公開されると、インターネット上では『日本人観光客の写真撮影を理由もなくやめさせるのは非常に不適切であり、大国のイメージを傷つける』という反応があった」と報じた。さらに、このインフルエンサーの「亜人」というアカウント名は日本のアニメーションから取った名前であり、彼が米国留学中に犯罪に及んだとの疑惑も浮上している。「亜人」は結局、自身のアカウントから数百件の動画を削除した。

 同メディアは「盲目的な外国人ヘイトは民族的大義ではない。『亜人』は誰も自分のことを支持してくれないとは思わなかっただろう」と「亜人」の行動を批判した。また、日本人インフルエンサーが中国人観光客たちを「脳のない愛国者」と見下した件を例に挙げ、「立場を変えて考えてみれば、一面識もない人に悪意ある悪口を浴びせる人々は本当に尊敬できない」と指摘した。

 中国でヘイトクライムの対象になったのは日本人だけではない。今年3月に四川省でデモの現場を取材していたオランダ人記者2人が暴行され、6月には吉林市のある公園で中国人の男が米国人大学講師4人に向かって凶器を振り回すという事件もあった。また同月、江蘇省では凶器を持った男が日本人学校のスクールバスを待っていた女性とその息子を襲っている。

 そうした事件が起こるたびに、中国当局は「偶発的犯罪」に過ぎないという見解を示している。中国外務省の報道官は「このような偶発的犯罪は全世界のどの国でも起こりうる。中国は世界でも認められている最も安全な国だ」と強調した。

 中国当局のこのような反応の背景には、外国人の投資の急減があると言われている。今年1月から7月までの中国の外国人直接投資誘致額は前年同期比で29.6%減少した。さらに、1-2月に比べ、下半期に近づくほど減少幅がさらに拡大している。

 不動産市場と内需低迷が続いている状況で、外国人投資まで減っていることから、中国当局は海外企業に対する差別待遇を是正するなど相次いで「ラブコール」を送っているが、減少傾向はとどまる気配がない。経済成長が鈍っているせいもあるが、愛国主義教育を強化したのがブーメランになって外国人排斥事件を招き、外国企業の不安が広がっているとの指摘もある。

イ・ガヨン記者

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