▲李俊錫・国民の力代表(当時)が2022年8月13日午後、韓国国会の疎通館で記者会見を開き、党非常対策委員会への体制転換に対する仮処分申請などに関して自ら見解を表明している様子。/聯合ニュース

 韓国検察が、「性接待」疑惑を提起した人物を告訴したものの虚偽告訴の疑いで告発されていた李俊錫(イ・ジュンソク)改革新党議員=元「国民の力」代表=について、「嫌疑なし」の処分を行った。「性接待」疑惑そのものについても、立証できる証拠は出なかったとした。2年前、李俊錫・国民の力代表は「性接待」疑惑に関連して4件の疑いがかけられ、代表職を追われたが、それらの容疑は全て根拠がなかったのだ。

 この疑惑が浮上したのは、国民の力が大統領選挙と地方選挙で勝利した直後だった。通常、この時期は与党全体がお祝いムードで、メディアが「勝利に酔うな」と指摘するようになるのが常だった。ところが国民の力は、選挙惨敗政党のように泥沼の内戦を繰り広げ、指導部が姿を消すという事態を自ら招いた。大統領選の過程で起きた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と李俊錫代表間の不和のせいだ。親尹系は、司法的判断が下らなかったにもかかわらず、李代表を「性犯罪者」として追及し、懲戒した。この懲戒に根拠がなかったということが、今回の検察の捜査の結果、あらためて明らかにされたのだ。懲戒の過程で尹大統領と李・元代表は、非常に恥ずかしい感情的なけんかを繰り広げた。

 尹大統領はいくらでも李議員と会ってわだかまりを解き、内紛を収拾することができたが、そうしなかった。当時、李議員も国民の力の非常対策委を狙って仮処分申請を5回も行い、内部抗争を大きくした。李議員を支持していた人は党内に少なくなかったが、その人々も首を横に振った。党内が大荒れになり、尹大統領と李議員の双方が大きな傷を負った。尹大統領の支持率から低下していった。当時、支持率は10ポイントくらい落ち、これは回復しなかった。

 尹政権は、大統領と党代表の対立で最初の6カ月を空費した。政権初期にもかかわらず、国政の動力は失われた。尹大統領はその後も、党内の人物と次々と敵対し、大統領選の勝利をつくった選挙連合を自ら解体してしまった。総選挙を目前にして、韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委員長の辞任まで要求した。「性接待騒動」から始まった韓国与党の分裂は、総選挙惨敗につながった。与党が心を一つにして国政を改革することを期待していた韓国国民としては、本当にあきれてしまう、支離滅裂なありさまだった。大統領選に勝った政党が、勝利の直後、全くの感情的なけんかのせいで自ら崩壊していったというのは空前絶後のことだろう。そんな政党だから、性接待疑惑がこのような形で終わったのに遺憾を表明する人物が一人としていないのも、ある意味で当然のことのように見える。

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