▲世界的なソプラノ歌手アンジェラ・ゲオルギュー。写真=聯合ニュース

 「ソプラノ歌手アンジェラ・ゲオルギュー側に強い抗議の意を示すと共に、韓国の観客に対する謝罪を求める考えです」

 ソウル世宗文化会館が日曜日(8日)深夜に異例の謝罪文を掲載した。8日午後5時から同劇場で上演されたプッチーニのオペラ『トスカ』公演のためだった。ルーマニア出身の世界的ソプラノ歌手アンジェラ・ゲオルギュー(59)がヒロインのトスカ役を演じて話題を呼んだ。ゲオルギューは1994年、英国ロイヤル・オペラ・ハウスでオペラ『椿姫』に出演し、「ディーバ(歌姫)」となった声楽家だ。優れた歌唱力だけでなく、秀麗な容姿と演技力を持ち、1990-2000年代を風靡(ふうび)して「最高のディーバ」と呼ばれた。テナーのロベルト・アラーニャと1996年オペラ『ラ・ボエーム』の公演中に結婚し、「世紀のオペラ・カップル」と呼ばれたが、2009年に破局した。

 ゲオルギューは世界的なディーバであるのと同時に、世界有数のオペラ劇場でたびたび意見の衝突や論争を起こす血の気の多い性格でも有名だ。この日も第3幕で再び「突発的行動」を取った。第3幕でトスカの恋人マリオ・カヴァラドッシ役を演じた韓国人テノール歌手キム・ジェヒョンがアリア『星は光りぬ』を歌った後、同じ曲をもう一度アンコールで歌ったのが発端だった。すると、トスカ役のゲオルギューが突然舞台に飛び出してきて、富川フィルハーモニック・オーケストラを指揮していた指揮者チ・ジュンベ氏に向かって手を振りながら「これは独唱会ではない。私を尊重してほしい」と客席にまで聞こえるほどの大声で叫んだのだ。

 オペラは演劇と同じようにドラマなので、劇中の挿入曲であるアリアもやはり一度ずつ歌うのが普通だ。ただし、聴衆が好きで人気のあるアリアや高難度の曲は、拍手喝采(かっさい)を受けてアンコール方式でその場でもう一度歌うこともある。これに対してゲオルギューが公演中に舞台上で不満を言ったものだ。このため、インターネット上では一部の人々が「ゲオルギューが舞台に乱入した」と表現した。

 紆余(うよ)曲折の末、公演は終わったものの、幕が降りた後もゲオルギューの「突発的行動」は続いた。ゲオルギューがあいさつするために舞台に姿を現すと、客席のあちこちからブーイングがわき起こった。すると、ゲオルギューは舞台であいさつをせずにそのまま退場してしまった。公演直後、観客たちは強い抗議と共に払い戻しを求める意向を表明した。

 ゲオルギューの「突発的行動」は今回が初めてではない。2016年にオーストリアのウィーン国立オペラ劇場でも偶然だが同じオペラ『トスカ』で同じアリア『星は光りぬ』をテノールのヨナス・カウフマンがアンコールでもう一度歌うと、これに抗議して退場し、しばらく公演を遅延させた。音楽評論家のチャン・イルボム氏は「かつてオペラのディーバは鼻が高く、公演のために劇場のあらゆる人々が持ち上げてやらなければならない存在だったが、今はかなり時代錯誤的だ。公演中に聴衆の前で何かをコメントするのは大人げない態度だった」と指摘した。

 ゲオルギューは以前にも演出の方向性や衣装、リハーサル不参加といった問題で欧米のオペラ劇場と頻繁に衝突を起こしてきた。1997年の米メトロポリタン歌劇場(MET)日本公演ではオペラ『カルメン』で「金髪のかつらをかぶってほしい」という演出家の指示に反発した。結局、出演者交代というMET側の超強硬手段でゲオルギューは次の公演からかつらをかぶるようになったものの、「その上にずきんをかぶって出てきた」と外信が報じた。2007年にも米シカゴ・リリック・オペラ劇場で『ラ・ボエーム』にキャスティングされたが、リハーサル不参加などを理由に降板となった。

 ゲオルギューは自身のはばかることのない発言と性格について「ルーマニアのチャウシェスク共産独裁政権下で育ったため」と2007年に英紙タイムズとのインタビューで語っている。ゲオルギューはこのインタビューで「意見が持てない国で育ったため、今はかえって強くなった。他の声楽家たちは『意見を率直に言えば劇場から二度と声がかからなくなるのでは』と恐れているが、私はある面では革命的な勇気を持っている。大衆音楽が肉体のためのものだとしたら、オペラは精神のためのものだ。私はオペラのために闘う」と語った。

金成炫(キム・ソンヒョン)文化専門記者

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