▲写真=TVING

 OTT(オンライン動画配信サービス)大手のTVINGが手掛ける初の時代劇『于氏王后』が、配信開始前から考証論争に巻き込まれている。高句麗故国川王の夫人かつ、レビラト婚(未亡人が夫の兄弟と結婚する慣習)により2度も王后の座に上ったウ・ヒ(チョン・ジョンソ)が主人公、制作費300億ウォン(現在のレートで約32億8000万円)以上が投じられたということで、期待を集めていた。全8話のうち、8月29日から配信が始まった第1話-第4話では、突然の王の死去後、義弟の一人と再婚して自分の部族を守ろうとするウ・ヒの姿と、ウ・ヒを追う勢力の追撃戦が繰り広げられた。高句麗の気迫を示そうとした企画の狙いとは異なり、予告編が公開された時点で早くも「中国風」という批判が出た。

 論争になった部分は、大きく分けて二つある。▲王と王后の金色の服装が中国の皇帝を連想させる▲国相・乙巴素(ウル・パソ)のセンター分けの髪型や、髷(まげ)にかぶせる冠(サントゥ冠)は中国式-という指摘だ。『于氏王后』のシム・ヒョンソプ衣装監督は「衣装でも高句麗の強靭(きょうじん)なアイデンティティーを示そうと思い、見た目を良くするために飾り付けはしたが、『中国風』だという批判は受け入れられない」と反発した。シム監督は『王の男』『観相師 -かんそうし-』『王の運命-歴史を変えた八日間-』など、多数の時代劇映画で衣装を担当してきた。

(1)黄色は中国皇帝の色?

 王位を巡って展開する5部族の知略の争いは、高句麗版「ゲーム・オブ・スローンズ」のように見える。シム監督は、韓国の伝統色である「五方正色」(黄・青・白・赤・黒)を5部族にそれぞれ付与した、と説明した。広開土王碑にも「(天が)黄竜を呼び、降臨して王を迎えた」という内容があるだけに、宇宙を象徴する黄色を強力な王権の象徴として表現したというのだ。シム監督は「中国の皇帝が黄色の服を着たのは後代のことであって、ドラマの舞台である西暦2世紀の中国の皇帝は、むしろ黒い服を着ていた」と述べた。

ドラマは、故国川王(チ・チャンウク)が漢に奪われた地を取り戻すため玄菟郡を攻撃する、大規模な戦争の場面から始まる。高句麗のよろいの特徴である、首回りについたて状に立てた「モッカリゲ」や、翼の装飾を施したかぶとは、古墳壁画に描かれた服飾をそのまま再現した。王の黄金のよろいは、実際の記録に基づいて、金色のうるしを塗って作った。シム監督は「高句麗のよろいの主な特徴である下衣のよろいも作り、かぶとの形やよろいの質感まで、できる限り記録に依拠した」と語った。

(2)乙巴素の服飾が中国式?

 官僚たちは高句麗伝統の三角帽「折風」をかぶって登場するのに対し、乙巴素だけは、中国時代劇の冠帽に似た「サントゥ冠」をかぶっており、論争を呼び起こした。伝統服飾文化の専門家である蔡今錫(チェ・グムソク)淑明女子大衣類学科名誉教授も「見たことのない形態」としつつ「韓国ドラマは今や世界の注目を集めているのだから、考証にもっと努力を傾けるべきだった」と語った。

 TVING側は「形は似ているように見えるかもしれないが、高句麗のよろいの特徴であるモッカリゲと三足烏(さんそくう、3本足のカラス)の文様を組み合わせてデザインしたサントゥ冠」だと説明した。一部のネットユーザーは「高句麗は左襟を服の内側に入れる左袵(さじん、左前)方式だったのに、乙巴素は中国式の右袵(右前)で服を着ている」と主張した。これは事実ではなく、研究によると、高句麗には左袵と右袵が混在していた。

 公営放送でもなくドキュメンタリーでもない、OTTのドラマに対して厳格な基準を当てはめるのは難しい、という反論もある。『于氏王后』は、伝統時代劇よりはファンタジーに近いフュージョン時代劇だ。OTTだからこそ可能な、かなり過激なベッドシーンや、残酷なアクションシーンも多数含まれる。シム監督は「歴史的考証にばかりこだわったら、視聴者の目の高さに合わせることは難しい。史料を基本にはするが、想像力を足して、世界をとりこにできる作品を作らなければならない」と語った。

ペク・スジン記者

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