▲グラフィック=ヤン・ジンギョン

 ソウル市西大門区延喜洞の城山路近くで8月30日午前8時40分ごろ、道路の沈下が発見され、交通が規制された。前日のシンクホール(地盤の落ち込み)の発生で、運転手2人が重傷を負った地点から約30メートル離れた地点だ。ソウル市が29日から周辺一帯を調査した結果、事故地点の向かい側の道路の地下に空洞と思わしき部分も追加で発見された。ソウルの都心で連日道路が沈下する状況に、市民たちは不安を訴えた。同日午前、延喜洞で出会ったキムさん(52)は「自動車が完全にはまってしまった様子にとても驚かされたが、今では運転するのも恐ろしい」と話す。

 韓国国土交通部(日本の省庁に相当、以下同じ)によると、全国に毎年100以上のシンクホールが発生している。2021年には142個、22年には177個、昨年は161個が発生した。ここ5年間で発生したシンクホールは計957カ所で、毎月16カ所ずつ発生していることになる。シンクホールの面積を合わせると約2.9平方キロメートルで、これまでに汝矣島に匹敵する広さの地盤が沈下したことになる。同期間、2人が死亡し、49人が負傷した。車両も81台が損傷を受けた。韓国政府と地方自治体がこれまで数回にわたって対策を講じてきたものの、夏場の豪雨などで今後もシンクホール事故がさらに発生しかねないといった懸念は後を絶たない。

 ここ5年で発生したシンクホールのうち、半数以上(57.4%)が上下水道管の損傷などにより発生した。主に古いパイプから水が漏れ、土砂が流失し、道路が崩れたのだ。環境部によると、全国の上下水道管は延べ40万キロに及んでいる。このうち老朽管は約7万2500キロと、全体の18%に上っている。

 ソウル市は市内の老朽上下水道管の交換や洗浄に3兆ウォン(約3200億円)近い予算がかかると推算している。檀国大学土木環境工学科のキム・ドゥイル教授は「上下水道管は都市インフラの中心」とし「今後シンクホールによる事故を防止するためにも、予算を優先的に編成しなければならない」と警鐘を鳴らす。

 相次ぐシンクホール事故にソウル市は今年から地下を共同探査する回数と区間を大幅に増やした。しかし、レーダー性能などの限界で、今回の延喜洞のシンクホールのような事故を全て予測することは容易でない。地下2メートルまで探知可能な装備を使用しているものの、今回のシンクホールは2.5メートルの深さで発生したものとみられている。延世大学建設環境工学科のチョ・ウォンチョル名誉教授は「地下6-7メートルまで確認できる装備を使う必要性がある」と主張する。

 ソウル市は今回、延喜洞付近で行われていた雨水ポンプ場の工事がシンクホール事故の原因と関連のある可能性についても調査中だ。同工事で地下水の流れが不安定になり、事故現場の土砂が流失した可能性があるというのだ。専門家たちは、各種建築・土木工事が頻繁に行われているソウル市の地下の状況を綿密に調べなければならないと口をそろえる。アン・ヒョンジュン元建国大学建築学部長は、工事の際は随時、地下の空いた空間を埋めるよう呼び掛けている。

 精密な地下地図を作成し、都心の地下に設備や配管などがどのようにどれだけ配置されているのかを把握する作業も必要だ。現行法によると、地下に施設物を埋め込んだ場合、詳しい内容を区役所に報告するようになっているが、しっかりと管理されていないという。国土交通部などが管理する「地下空間統合地図」も形式的に作成されるが、事故を予防するには力不足と指摘されている。

パク・チンソン記者、キム・ボギョン記者

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