▲5日、ソウル・ワールドカップ・スタジアムで「2026国際サッカー連盟(FIFA)北中米ワールドカップ(W杯)」アジア最終予選グループB第1戦のパレスチナ戦が終わった後、応援席に近づいて「ブーイングを控えてほしい」と頼む韓国代表の金ミン哉(キム・ミンジェ)=写真左=。金ミン哉は「我々(韓国代表選手)がうまくプレーできないことを一部のファンが願っているように思ったため、そう言った」と説明した。写真=動画共有サイト「ユーチューブ」より

 「2026国際サッカー連盟(FIFA)北中米ワールドカップ(W杯)」アジア最終予選グループB第1戦・韓国対パレスチナの試合が行われた5日、ソウル・ワールドカップ・スタジアム。0-0の引き分けで試合が終わると、観客席からブーイングがわき起こった。FIFAランキング96位のパレスチナに23位の韓国がここまで苦戦するとは思わなかったからだ。そのブーイングの多くが同日、10年ぶりに韓国代表チームの指揮をとり、W杯アジア最終予選の初戦に臨んだ洪明甫(ホン・ミョンボ)韓国代表監督(55)に向けられたものだった。大韓サッカー協会は同氏の代表監督選任過程で少なからぬ手続きを無視した。監督選任機能を担う戦力強化委員会の意見をろくに聞かず、理事会の議決過程もすっ飛ばしたと批判されている。また、洪明甫監督は韓国プロサッカー・Kリーグのチームの監督だったが、その最中に「チームを捨てていなくなった」との非難を浴びている。それも、「代表監督は引き受けない」と公言していたのに、それを覆したため、ひときわ強い怒りを買っている。

 洪明甫監督としてはこの日の試合で挽回(ばんかい)する必要があった。ところが、結果はさらなる失望を招いた。韓国代表チーム公式応援団「赤い悪魔(レッド・デビルズ)」も失望のあまり愚痴とブーイングを浴びせた。ところがこの時、韓国代表のDF金ミン哉(キム・ミンジェ、27)=バイエルン・ミュンヘン=は応援席の方に向かって歩いていき、ブーイングを控えてほしいと要求するようなジェスチャーをした。腰に両腕を当てて「お願いします」と叫んだのだ。金ミン哉は「我々(韓国代表選手)がうまくプレーできないことを一部のファンが願っているように思ったため、そう言った。我々が最初からうまくできなかったわけではないのに、ブーイングが聞こえた」「深刻な状況ではまったくなかった。ただ、選手たちを応援してくれればうれしいと申し上げただけ」と言いながらも、「考え方次第だから、深刻に受け止める方はそれでいい」とも言った。

 すると、サッカー関連インターネット・コミュニティー・サイトなどでは非難の声が相次いだ。「やじは選手が耐えなければならない問題」「やじられたからって観客席に走ってくる選手がどこにいるんだ」「(ドイツの)所属チームで批判された時は何も言わなかったのに。韓国のファンをなめているのか」などの声だ。ファンの一部は交流サイト(SNS)の金ミン哉のアカウントに非難する書き込みをして炎上させた。その一方で、「(やじは)選手たちに向けられたものではない。手続きを無視して監督の座に就いた洪明甫に対して向けられたものだ」「金ミン哉が悪口を言われる筋合いはない。ブーイングが多すぎた」「ホームゲームで負けることを願うブーイングをするのは低俗な行為だ」などの反論も相次いでいる。

 この日のブーイングは洪明甫監督と共に大韓サッカー協会や同協会の鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長も対象だった。洪明甫監督が電光掲示板に映るたびに「ウー」というブーイングがわき起こり、太鼓の音に合わせて「鄭夢奎出て行け!」と叫んだ。「韓国サッカーの暗黒時代」「ピノキ洪(ホン=ウソをつくと鼻が伸びるピノキオとの語呂合わせ)」「選手は一流、会長は=?」といった批判の言葉が書かれた横断幕も登場した。赤い悪魔は6日、「どの瞬間もうまくいかないよう、負けるよう願って応援しなかった」「勝利を切に願っていた金ミン哉は良い結果が出なかった悔しさのあまり、誤解したようだ。ただし、表現の方法と場所は非常に残念だった」とコメントした。また、「公正さと常識がなく、意思疎通できない大韓サッカー協会の行為に対して最も強く声を上げることができ、注目を集めることもできる場はスタジアムだと考えた」「ウソで一貫している協会と、自身の信念を曲げた監督に対する抗議とブーイングだった」と説明した。

 11回連続でW杯に進出するための最後の舞台の初戦は不安に包まれた。前回のアジアカップの失敗後、韓国サッカーは動揺し続けている。ユルゲン・クリンスマン前代表監督の「外遊」「在宅勤務」問題に電撃更迭、アジアカップ時の主軸選手ソン・フンミンとイ・ガンインの衝突、そして競技力の低迷など、雑音が絶えなかった。さらに、後任監督の人選過程でも未熟な戦力強化委員会の運営や手続きを無視した洪明甫監督の選任などが続き、騒動は大きくなりそうだ。

 キャプテンのソン・フンミンは「ファンが望む監督がいたのだろうが、既に(監督選任は)決まったことで、我々には変えられない部分だ」「キャプテンとしてチームのことを考えてファンに応援と愛をお願いしたい。監督も最善を尽くしている」「金ミン哉のようなケースは二度とあってはならない。ファンと選手は良い関係で共に団結し、大韓民国の勝利を望むべきだ」「少なくともホームゲームでは選手たちに一言ずついい言葉を使って励ましてほしい」と語った。イ・ガンインも「監督が我々と一緒に臨んだ初めての試合だったが、応援ではなくブーイングで始まって非常に残念だった」「選手たちは監督を100%信じて、従うだろう。ファンは当然、とても残念に思っているだろうし腹も立つだろうが、それでもたくさんの声援を送ってほしいし、関心を持ってほしい」と言った。

キム・ヨンジュン記者

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