▲写真=NEWSIS

 ソウル中央地裁408号室の法廷で4日午前9時、被告人席後ろのモニターにソウルから1万6295キロ離れたペルーの首都リマにある韓国大使館のオフィスが映し出された。国家保安法違反容疑で裁判を受けているイ・ジョンフン被告(当時4・27時代研究院所属)が会ったとされる北朝鮮工作員とみられるコニシ(Konishi)の実在を確認するための証人尋問だった。

 イ被告は2017年に北朝鮮工作員と4回会い、韓国における進歩(革新)陣営の動向を報告し、暗号化された指令文の送受信方法などについて教育を受けた容疑で2021年に起訴された。検察はイ被告が会った工作員を日系ペルー人に偽装した「コニシ」とみている。コニシが「ノグチ」という女性工作員と夫婦として行動し、ペルーやフィリピンなどでスパイ活動をしていた当時、韓国国内でイ被告に会ったという。これに対してイ被告は「捜査の内容は捏造(ねつぞう)」と主張している。コニシが本当にスパイか、ペルー在住が本当か、身分を偽装しているかなどは確認されていないという。

 問題はコニシ夫婦が2020年2月に死亡したため、実在の人物かの確認が難しい点だった。検察はペルーでコニシを見たとか、コニシ夫婦について知っているペルー現地の人物を証人にしたいと申し出た。イ・ジュング裁判長(刑事18単独)は海外からの遠隔尋問の前例を検討した上でこれを認めた。

 ペルーとの時差(14時間)を考慮し、通常午前10時から始まる裁判の開始時間を裁判長は午前9時(ペルーでは午後7時)とした。法廷に設置されたモニターは四つに分割され、大使館の証人、法廷内の被告と弁護人、検事、通訳が映し出された。裁判長、検事、弁護人が1回ずつ質問すれば、通訳がこれをスペイン語に訳し、証人が回答すれば再び韓国語に訳すという形で裁判は行われた。

 現地の大使館にいた3人の証人はコニシを調査したか、あるいはコニシに直接会った人物だ。彼らは全員が「コニシをペルーで見たが、身分を偽装したと疑っている」と証言した。ペルー市民のフアンさんは「コニシ夫婦が1996年にペルーで結婚した時にその場にいた。韓国の捜査官が示した男性の写真と私が見たコニシの顔、スタイルなどはよく似ている」と証言した。検事が「コニシの出生証明書などから疑うべき点はあるか」と質問すると、ペルーのバネサ弁護士は「両親の戸籍が全く存在せず、コニシが通ったとされる学校も存在していなかった」と説明した。コニシの身分が偽装された可能性があるという趣旨だった。

 今回の遠隔尋問は2時間近くにわたり行われた。裁判長は証人らに感謝の言葉を伝え「証言が終わったら気を付けて帰宅してください」と声をかけた。次回は11月6日に国家情報院職員らへの尋問が予定されている。

パン・グクリョル記者

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