▲イラスト=チョソン・デザイン&ラボ・Midjourney

 対北朝鮮情報機関の韓国軍情報司令部所属の軍務員が2017年に中国の情報要員とみられる人物から現金を受け取り、韓国軍情報担当者の個人情報などを提供していた。韓国軍検察が27日に明らかにした。この軍務員は中国の空港で逮捕され、家族に危害を加えるなどと脅迫を受けていたという。しかし部隊には報告せず、中国に何度も行き来しながら情報を提供していた。また中国側に40回にわたり4億ウォン(約4300万円)を要求したが、実際に受け取ったのは約1億6000万ウォン(約1700万円)だった。金と引き換えにより多くの情報提供を自ら持ちかけていたという。一般的に機密情報を取り扱う担当者は他国に身分が知られれば命が危うくなり、また十数年かけて構築してきたネットワークも一瞬で崩壊する。しかしこの軍務員は機密情報を扱う立場にありながら、同僚の命を金で売り渡し、国の情報網を根本から揺るがす反逆行為を7年にわたり続けてきたのだ。

 情報司令部は機密を取り扱うため、本人の担当以外の情報には最初からアクセスが制限されている。これは常識のはずだが、この軍務員は他部署の機密文書も「貸出」という形で簡単にその内容を知ることができた。時にはメモを取り、情報部隊で禁じられているスマホの音を出さないアプリなどを使いながら写真を撮影し外に持ち出すこともあったという。このようなスパイ行為が7年も繰り返されていたのだが、情報司令部は把握していなかった。特定の人物が他部署の機密を何度も要求したことに全く疑念を抱かず、スマートフォンのチェックさえまともに行っていなかったのだ。世界にこんな情報部隊が存在するだろうか。看板に「情報」という言葉があることさえ恥ずかしいことだ。

 流出した軍事機密の多くは北朝鮮に渡った可能性が高い。韓国軍検察は「問題の軍務員が接触した中国要員は実際は北朝鮮スパイだった可能性も考えられる」「北朝鮮の情報機関と連携していたと推測できる状況もある」などと説明した。北朝鮮関連の機密が中国に流れたことと、これが北朝鮮の手に直接渡ったことの違いは大きい。今後は最悪の事態を想定し、北朝鮮に対するこれまでの情報活動を再点検する必要があるだろう。情報司令部の組織とその運営方式も最初から最後まで見直さねばならない。

 この情報司令部軍務員が本格的に情報を持ち出し始めたのは2018年からだった。この年に当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、韓国軍のスパイ対策やセキュリティーの監視を行う韓国軍機務司令部を解体し、さらに国家情報院から対共捜査権も取り上げた。昨年全国民主労働組合総連盟の現職幹部や元幹部らがスパイ容疑などで拘束されたが、彼らが北朝鮮工作員に取り込まれた時期もほとんどが文在寅前政権の時だった。これは決して偶然ではない。

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