萬物相
米原発巨大企業ウェスチングハウスの没落【萬物相】
ジョージ・ウェスチングハウスは「電気革命」の先頭走者の座を巡り、トーマス・エジソンと戦ったライバルだった。南北戦争当時、北軍に参戦したウェスチングハウスは、汽車用の空気ブレーキを発明して資金を稼いだ後、「電気事業」に目を向けた。天才技術者のテスラを迎え入れ、交流送電システムを開発し、直流送電にこだわったエジソンと競争を演じた。1886年にはエジソンを退け、シカゴ万博の電灯契約も獲得した。ナイアガラの滝に発電所を建設し、電気の大衆化時代を切り開いたのも、創業者の名を取った現在の米電力設備大手ウェスチングハウスだった。
1957年、ウェスチングハウスは世界で初めて原子力発電所を設けた。その後、全世界の原発の半分以上を建設した「原発巨大企業」に成長した。韓国初の原発である古里原発1号機もウェスチングハウスの技術供与で実現した。勢いに乗ったウェスチングハウスは1979年、米スリーマイル原発事故で危機を迎える。米政府が30年以上原発の新規建設を中断すると、経営難に陥ったのだ。2005年、日本の東芝が54億ドル(現在のレートで約7,780億円)でウェスチングハウスを買収した。
2011年の東日本巨大地震で福島原発事故が発生した。日本は原発50基の稼働を中断し、他国も原発建設計画を次々と白紙化した。原発事業は東芝に7兆ウォン(約7,600億円)以上の損失をもたらした。東芝は2015年、粉飾決算が明らかになり、グループが空中分解する状況に追い込まれた。東芝は医療機器事業をキヤノンに、白物家電事業を中国企業に、半導体事業はSKハイニックスを含む多国籍コンソーシアムにそれぞれ売却した。
親会社の東芝が立ち行かなくなると、ウェスチングハウスは2017年に米国の裁判所に破産を申し立てた。1年後、カナダの投資ファンドが46億ドルでウェスチングハウスを買収した。4年後の2022年、ウェスチングハウスはカナダのウラン採掘企業によるコンソーシアムに78億ドルで再売却された。130年の伝統を誇る元祖原発企業はオーナーが何度も交代し、投資ファンドによる投機対象となった格好だ。
2009年、韓国がアラブ首長国連邦(UAE)に原発を輸出する際、ウェスチングハウスは特許を侵害されたとして、巨額の技術料を要求したことがある。当時、韓国は法廷で争わず、ウェスチングハウスと東芝の設備を購入する方法で体面を保った。ところが最近、韓国が独自開発した「K原発モデル」で24兆ウォン規模のチェコ原発を受注すると、ウェスチングハウスは再び「技術侵害」を理由に介入を始めた。一時、世界を牛耳っていた「原発巨大企業」は、みかじめ料を取り立てる組織暴力団のような存在と化した。
金洪秀(キム・ホンス)論説委員