▲グラフィック=ペク・ヒョンソン

 ソウル市内に住む中学2年生のパクさん(13)は26日朝、友人からこのようなメールを受けてびっくりした。パクさんはすぐSNS(交流サイト)の自らのアカウントを非公開とした。しかし以前ネットに公開していた顔写真を何者かが悪用し、性犯罪に悪用されないか今も恐怖におびえている。

 大学で発生した「ディープフェイク性犯罪」の被害が10代にまで及び、中高校生の間で「自分も被害者になるかも」という不安と恐怖が広がっている。

 「ディープフェイク」とは人工知能(AI)の学習を意味するディープラーニングとフェイクを合成した言葉で、AIで作成した虚偽コンテンツのことを言う。SNSなどに公開されている顔写真に裸体など性的な画像を合成し、これが「性犯罪物」としてネットに広がるケースが増えているのだ。最近は性的なディープフェイク画像をテレグラムのチャットルーム(別名、知人同士の部屋)やチャンネルなどで共有する犯罪がソウル大学や仁荷大学の在学生と卒業生の間で広がり、チャットルームの管理人が検挙されたケースもある。

 ディープフェイクへの恐怖が10代の間で広がる背景には、学校ごとのテレグラムチャンネルの存在が急速に知られ始めたことがある。実際に26日にテレグラムデータ検察サイトの「テレメトリオ」で「知人同士の部屋」などを検索したところ数百件がヒットしたが、そのタイトルの中には「○○高校」「○○中学」など多くの学校名が出てきた。

 生徒たちは「被害学校リスト」を作成しこれを共有するなど独自の対策に乗り出している。25日にSNSのX(旧ツイッター)にアップされた「テレグラムディープフェイク被害学校リスト」には全国477の小中高校名が掲載されている(26日午後6時時点)。ただしリストに上がったこれら全ての学校で実際に被害が発生したかは確認できていない。

 しかしリストに上がった京畿道のある高校の教頭は本紙の電話取材に「本校でもディープフェイク性犯罪物被害が発生した事実を把握している」「問題が非常に重大であり、地域の他の学校にも(被害者が)いるので、教育庁次元で警察と協力しながら対応することにした」と明らかにした。

 京畿道の別の高校でも生徒会のインスタグラムを通じ「現在テレグラムに(本校)生徒の個人情報やディープフェイク合成写真が広がっている」「インスタグラムにアップロードした個人の写真は全て削除し、事前に被害を防いでほしい」と呼びかけている。

 このように生徒たちの間で不安が広がっていることから、教育庁(教育委員会に相当)なども対応に乗り出している。大田市教育庁は26日に市内の学校に文書で「ディープフェイクなどデジタル性犯罪特別注意報」を出し、来月6日までを特別教育週間に定めた。学校で被害が確認された場合は警察に通報することを促し、被害者となった生徒への支援は教育庁が直接行うことにした。

 ディープフェイク犯罪の犯人は10代も増加している。韓国与党・国民の力の趙恩熹(チョ·ウンヒ)議員事務所が警察庁から入手した資料によると、ここ3年間で虚偽の写真や動画を作成しこれを配布して立件された被疑者の69%(194件)が10代だった。性暴力処罰法によりディープフェイク性犯罪物を作成あるいは広めた者は5年以下の懲役または5000万ウォン(約540万円)以下の罰金に処される。しかしSNS使用や写真の共有などを日常的に行っている10代はディープフェイク画像の作成や共有を犯罪とは認識していないという。

 中には教師の写真で性的なディープフェイク画像や動画を作成する生徒もいる。韓国野党・共に民主党のペク・スンア議員事務所が特別市、広域市、道などの教育庁から入手した資料によると、10代が作った教師の性的なディープフェイク画像や動画は2022年の8件から昨年は30件、今年は1学期だけで35件へと急増している。

 教師労働組合連盟はこの日声明を出し「生徒や教師らは自分も知らない間に性犯罪の被害者となる事実に衝撃と不安を訴えている」「国家次元で通報の仕組みの整備、対応、被害者支援に直ちに取り組んでほしい」と要求している。

 警察はテレグラムなど海外にサーバーを置くSNSについては「犯罪に利用された場合でも捜査は簡単ではない」と語る。企業側に捜査協力を依頼しても回答は一切ないという。ソウル警察庁の金峰植(キム・ボンシク)庁長は26日に記者団の取材に応じ「生徒たちはもちろん、教師の写真や動画も広がっている」「IT機器を使い慣れた若者を中心に問題が広がっている事実を非常に懸念している」と述べた。

キム・ギョンウン記者

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