▲グラフィック=キム・ウィギュン

 今年5月に飲酒当て逃げで逮捕・起訴された歌手キム・ホジュン(33)容疑者の事件以降、韓国国会では飲酒運転事故直後に飲酒して、事故当時の血中アルコール濃度測定をできなくする妨害行為や他人が運転していたように装う替え玉行為などを防止するための道路交通法改正を推進している。これに対し、キム容疑者の熱狂的なファンは国会議員に対し、「落選させる」「弾劾する」「あなたがたは悪魔のようだ」などと電話や携帯メールで筋違いな攻撃に及んでいる。議員とその秘書らは「ファン集団の標的となると、正常な議会活動ができないほどだ」と話した。

 共に民主党の申栄大(シン・ヨンデ)議員、国民の力の朴成訓(パク・ソンフン)議員は最近、事故直後に飲酒することで事故当時に飲酒していたかどうかを測定不能にする妨害行為に及んだ場合、5年以下の懲役、2000万ウォン(約217万円)以下の罰金を科す別名「キム・ホジュン防止法」を提案した。飲酒運転で3回摘発された場合に免許を永久剥奪する条項も含まれた。民主党の徐瑛教(ソ・ヨンギョ)議員、国民の力の李種培(イ・ジョンベ)議員も最近、同様の趣旨の法案を提出した。

 すると、キム容疑者のファンは、議員事務所に抗議の電話をかけたり、議員に携帯メールを送り付けたりし始めた。ソウル・汝矣島の議員会館事務室だけでなく、地元選挙区の事務所にも電話が殺到し、正常な業務ができなくなるほどだという。事務所前でデモを行うと脅迫する電話もかかってきている。

 朴成訓議員は本紙の通話取材に対し、「飲酒ひき逃げ容疑を免れるため、法の網をかいくぐろうとしたキム容疑者の手口が詳細に明らかにたり、模倣犯も続出した」とし、「国民の安全のために提出した法案であり、特定人を非難するという趣旨ではない。反応に困惑している」と話した。申栄大、朴成訓両議員が提出した法案の原文を見れば、キム容疑者を名指ししておらず、「最近問題になった検査妨害などによる社会的被害を減らさなければならない」などと提案理由を説明している。

 法案に事件の加害者・被害者など特定人物の名前に因んで「◯◯◯法」といった別名を付けることは政界でありふれた慣例だ。それでもキム容疑者のファンは「法案が成立したら落選運動を行う」とし、国会の立法予告掲示板に1万件を超える反対意見を書き込んだ。「反省している若者の人生を台無しにする」「なぜ人を一生罪人扱いするのか」といった意見もあった。18日夜までに寄せられた反対意見は朴成訓議員(約6200件)、徐瑛教(約4500件)、申栄大議員(約1300件)に上った。

 専門家らは過激なファン文化が電話や携帯メールで三権分立の一翼を担う立法機能までまひさせる状況に至っていると指摘した。過去には与野党の主流政治家の支持者が反主流議員を排除するためにそうした行為に出たが、それが社会全体に拡大した格好だ。

 仁川大のイ・ジュンハン教授(政治学)は「味方なら違法、不道徳であってもまずは擁護しようという誤った群衆心理が政界に端を発し、社会全体に広がっている」とした上で、「不正政治家が『自分は無罪』『魔女狩りだ』『政治弾圧だ』と決まって主張する姿を歌手のファンクラブが見習ったものだ」と指摘した。

 明知大の申律(シン・ユル)教授(政治学)は「ファン勢力が国会の立法過程に関与することは社会正義に否定的影響を及ぼしかねない」と話した。竜仁大政治学科の崔彰烈(チェ・チャンリョル)教授は「法案の核心である模倣犯に対する議論は消え、コメントテロによる立法機関への不当な圧迫だけが残った」と述べた。

 一方、警察は飲酒運転容疑から逃れるために「キム・ホジュンの真似」をする運転者の存在に頭を悩ませている。ソウルのある警察署の交通課長は「飲酒運転の通報を受けて現場に到着すると、『さっき酒を飲んだ』と言い、飲み終わった酒瓶を振る被疑者が増えた」と話した。飲酒が疑われる車が警察の追跡を避けようとして人身事故を起こしたこともあるほか、飲酒測定を頑なに拒否する幹部公務員も出ている。

ク・アモ記者、キム・ビョングォン記者、キム・ボギョン記者

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