▲平安北道新義州市と義州郡の水害現場を視察した金正恩総書記。28日撮影。/朝鮮中央通信、聯合ニュース

 北朝鮮の水害被災地でロシアから送られた支援物資のバターを受け取った住民が「プーチン万歳」と口にしたところ、北朝鮮国家保衛部(情報機関)に連行されたことが分かった。

 米自由アジア放送が23日に報じた。それによるとロシアは北朝鮮に食糧、砂糖、バター、食用油などの支援物資を送り、これらが北朝鮮北東部の羅先市経由で被災地に到着した。北朝鮮は支援物資を被災地に送る一方、国家保衛部が住民の動きを監視した。

 平安北道のある現地筋は「義州郡の被災者に家族1カ月分の食糧として米や小麦(4人家族で約50-60キロ)などの支援が行われた。これらはロシアから送られた水害被災者への支援物資だ」と伝えた。

 この現地筋は「(これらの物資は)今月10日から2日かけて搬入され、鉄道で水害被災地に運ばれ義州郡の被災者らも受け取ったと鉄道の幹部から聞いた」と明らかにしているが、支援物資の正確な規模はわからないという。

 米や小麦を除く一部の物資は「8・15」に合わせ特別供給の形で手渡されたという。上記の現地筋は「8・15名節物資として被災者一世帯あたり豆油1キログラムとバター200グラムが配られたが、これらの特別物資もロシアから送られたことが幹部らを通じて住民に広がった」と説明した。

 現地筋は「支援物資を受け取った40代のある女性の被災者が臨時避難所のテントの中で『プーチン万歳だ』と口にしたところ、これが摘発され義州郡保衛部に連行された」とも伝えた。

 この女性は保衛部で批判書を書いて翌日には釈放されたが、被災者らは「当局は臨時避難所に住民を監視するスパイを潜り込ませた」と語り合い、不満げな表情を示しているという。

 別の現地筋によると、北朝鮮当局は「支援物資はロシアから送られた」と住民には特に伝えていないが、配られた小麦の袋にロシア語が書かれていたので、被災者たちはこれらがロシアから運ばれたものと理解しているという。

 支援物資にはバターもあったが、被災者らがバターを受け取るのは今回がはじめてだった。この現地筋は「今回の支援が特にありがたかったのは、外国の映画やドラマでしか見たことのなかったバターを子どもたちに食べさせることができたことだ。これは金正恩の愛情ではなく、ロシアのおかげと考えているからだ」とも伝えた。

 さらに「ロシアからの支援物資のおかげで生き延びているのに、『プーチン万歳』と口にしたことの何が悪いのかなど、住民たちは数々の不満を口々に語り合っている」とも明らかにした。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は7月31日、先日の豪雨の影響として「鴨緑江下流の新義州市と義州郡で住宅4100世帯、3000町歩の農耕地、公共機関の多くの建物、道路、鉄道の線路などで浸水や冠水被害が発生した」と報じ、浸水した現地の建物などの写真を掲載した。

 韓国政府や国際社会からの人道支援の申し出を北朝鮮は全て拒絶したが、今月4日付の労働新聞はロシアのプーチン大統領から送られた洪水被害関連の見舞いの書簡を紹介した上で、「今後どうしても必要になれば最も真実な友人たちであるモスクワに支援を要請する」という金正恩総書記の言葉も伝えた。

キム・ジャア記者

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