▲イラスト=UTOIMAGE

 8月上旬に終了した2024年の環太平洋合同演習(RIMPAC)で、米空母機動部隊が400キロ先にいる中国の爆撃機などを攻撃できる超長距離空対空ミサイルを実戦配備した事実が確認され、中国側が緊張しています。台湾侵攻のため福建省から発進する中国軍の早期警戒管制機(AWACS)、爆撃機、空中給油機などが、離陸するや否やこのミサイルの標的になりかねないからです。

▲南シナ海上空を飛行中の中国の戦略爆撃機H6K。/朝鮮日報DB

 AIM174Bという名のこのミサイルは、韓国軍も迎撃用として使っているSM6艦対空ミサイルを戦闘機からも発射できるように改造したモデルです。米国の防衛関連企業レイセオンが開発を担当しました。艦対空ミサイルの最大射程は370キロだが空対空バージョンは射程400キロに達する、とロイター通信は報じました。

 米国はこれまで、中国・ロシアと違って長距離空対空ミサイルを重要だとは考えてこなかったといいます。F35ステルス戦闘機などの性能が優れていて、実戦で検証された射程150キロのAIM120D AMRAAMだけでも十分だとみていたといいます。

 しかし中国がJ20(殲20)ステルス戦闘機を開発して大挙実戦配備し、制空権の優位が脅かされるや、対応に乗り出した-と専門家らは分析しています。「ウォーゾーン」など米国の軍事専門メディアは、このミサイルが台湾侵攻を抑止する「ゲームチェンジャー」になるだろうと見込みました。

■RIMPACでFA18に搭載した姿を公開

 米国は今年のRIMPACで、中国の台湾侵攻を念頭に置いた対抗用の兵器を複数公開しました。ステルス爆撃機B2が搭載する、4万トン級の中国の揚陸艦を1発で撃沈できる「クイックシンク」という新型爆弾も披露しました。ただし、米海軍がクイックシンク投下の事実を公式発表したのとは異なり、AIM174Bについては空母艦載機FA18Fスーパーホーネットに搭載した写真を見せるという形で公開しました。このミサイルを搭載したスーパーホーネットが空母「カール・ビンソン」から発艦しようとする様子を収めた動画も出てきました。

 ロイター通信は8月15日、「射程400キロの超長距離空対空ミサイルAIM174Bが、今年7月に当局の承認を得て米海軍に実戦配備された」と報じました。このミサイルは、中国空軍の長距離空対空ミサイルPL15(射程250キロ)より射程が長い、とロイターは伝えました。

 中国は、台湾侵攻時に米空母機動部隊が台湾海峡に接近するのを防ぐため、2000基近い中距離ミサイルを配備しています。中国自身が「空母キラー」と呼ぶDF21(東風21)、DF26(東風26)ミサイルなどが代表的です。戦略爆撃機のH6K(轟6K)、主力戦闘機J16(殲16)などはYJ12(鷹撃12)超音速対艦ミサイルを浴びせるでしょう。

■中国爆撃機・早期警戒機などがターゲット

 射程が長く、精度が高い長距離空対空ミサイルを保有していれば、こうした状況に効果的に対応できるはずです。はるかに遠く離れた場所から中国の爆撃機や戦闘機などを攻撃できます。専門家らは、AIM174Bミサイルは米空母に向けて飛来する中国軍の中距離弾道ミサイル(IRBM)も迎撃できるだろう、とみています。SM6本来の迎撃性能も発揮できるのです。

 中国が台湾に侵攻するとしたら、福建省南端から台湾南東部海域に至る400-500キロが主戦場になるはずです。射程400キロの空対空ミサイルがあれば、台湾へ進撃する中国の爆撃機や戦闘機、これらを支援するAWACS、空中給油機などは緊張を避けられません。その分、作戦遂行に制約を受けるはずです。空母キラーだというDF26 IRBMなどを迎撃できれば、米空母機動部隊は台湾にもっと近づいて作戦を展開できるでしょう。

 台湾のシンクタンク「中華戦略前瞻(ぜんせん)協会」の掲仲研究員は「空母機動部隊をはじめとする重要アセット(軍事資産)を保護しつつ遠距離攻撃を行うため、ミサイルを開発したものとみられる」とし「米空母を攻撃しようとする中国軍の戦闘機は、このミサイルの射程内に入り難く、台湾を攻撃しようとして危険な状況に陥ることもあり得る」とコメントしました。また、米国のある防衛技術アナリストは匿名で、ロイターの取材に対し「紛争発生時、米国がもう少し深く南シナ海側へ入ることができるという点が大きい」とし「潜在的に、中国軍の対応方式を変えてしまうだろう」と語りました。

■中国の空軍力強化に対抗

 中国は2016年に射程250キロの長距離空対空ミサイルPL15を実戦配備し、射程400キロのPL17も開発したといいます。しかし専門家らは、PL17は固体燃料エンジンの効率などに関連する技術的難題をまだ解決できていないものとみています。ロシアも、射程400キロのR37M長距離空対空ミサイルを開発し、2019年に実戦配備しました。

 他方、米国はF22・F35ステルス戦闘機の性能が中国・ロシアを上回っており、長距離空対空ミサイルの開発に積極的ではなかったといいます。これまで使ってきたAIM120 AMRAAMの経済性が優れていることも考慮したといいます。このミサイルは1発当たりの価格が100万ドル(現在のレートで約1億5000万円。以下同じ)で、400万ドル(約5億8000万円)するSM6よりはるかに安いといいます。

 しかし、中国がJ20ステルス戦闘機やPL15長距離空対空ミサイルを開発し、実戦配備したことで状況は変わりました。スティムソン・センターのケリー・グリエコ・シニアフェローは「J20とPL15の登場で、米国の制空権優位は蚕食された」とし「理論的には、中国の戦闘機はステルス機能のない米戦闘機を長距離から攻撃し、撃墜できる状況」と指摘しました。

崔有植(チェ・ユシク)記者

ホーム TOP