社会総合
「日本産のマダイもおいしい」 韓国で1年も続かなかった汚染水デマ 汚染処理水放出から1年
日本が福島原発放射能処理水の海洋放出を開始してから今月24日で1年になる。韓国政界では海洋放出をめぐって昨年夏、「核廃水」「セシウムのクロソイ」といった刺激的なスローガンで反日感情をあおった。当時、韓国最大規模の水産市場であるソウル市内の鷺梁津水産市場をはじめ、全国各地の水産市場で客足が途絶えた。商人たちは閑散とした店の番をしながら「私たちが何をしたと言うんだ」とため息をついていた。
ところが、本紙記者たちが今月19日午後に訪れた鷺梁津水産市場は「放射能デマ」など完全に忘れ去っているような雰囲気だった。ヒラメやマダイなどが泳いでいる「いけす」を数十人の買い物客たちが見物していた。「いくらですか?」「少しオマケしてよ」などのやり取りもあちこちで交わされていた。シマアジ・イシダイ・マハタ・イサキ・マダイなどが入ったいけすにはどれも「日本」という原産地表記がはっきり書かれていたが、気にする人は誰もいなかった。
市場の中央にある電光掲示板には16日、韓国水産業共同組合が実施した放射能検査で日本産マダイやイサキなどが「ヨウ素」「セシウム」などの項目ですべて「適合」と判定されていると書かれていた。「韓国では水産物の放射能検査をする時、国際標準および先進国に比べて10倍以上厳しい基準である1キログラム当り100ベクレルを適用している」という動画も流されていた。同組合は昨年の海洋放出開始以降、毎日(週末を除く)日本産水産物の放射能検査を行っている。
買い物客たちは「韓国産より日本産の方がおいしい魚種がある」「デマなどに気にしないで、おいしい日本産の魚を買って食べている」と語った。月に1回、鷺梁津水産市場で刺身を買っているというシンさん(60)は「マダイは韓国産より日本産のほうがはるかに食感がいいし、日本産のシマアジは絶品だ」と言った。シンさんは1年前の韓国野党による「放射能魚」などの主張について、「この世界で国民にそのような魚を輸入して食べさせる国や政府なんて、どこにあるだろうか」と言った。韓国政府はこの1年間で日本の水産物を対象に放射能検査を約4万4000回実施したが、基準値に近づいた結果が出たケースは1件もなかった。
別の買い物客のイさん(54)は「韓国産のニベ・ホヤ・アワビなどを買って、家で食べるつもりだ」と言った。そして、「海流を考えると、韓国は福島の汚染水が最も遅く到達する場所だそうだが、デマは話にならない。どうして今ここに大勢の人々が集まってきているというんだ」と話した。その上で、「おととい大阪に行ってきたが、韓国人団体観光客は原産地表記もない魚をよく食べていた」とも言った。昨年の海洋放出時、世界の原子力学界関係者たちは「ほとんどの放射能核種が多核種除去設備(ALPS)を通じてまず『ろ過』され、この過程でも除去できないトリチウム(三重水素)は海水で希釈して世界保健機関(WHO)の基準値(1リットル当たり1万ベクレル)以下に下げる」として、問題にならないと述べた。
鷺梁津水産市場の商人たちは「放射能の心配をする消費者はもうほとんどいない。むしろ、おいしいから日本産水産物のほうが韓国産より人気が高い」と語った。同市場で「シンナムド水産」を経営しているキム・スンヨルさん(50)は「日本産のマダイはエビをエサにしているので食感が絶品。韓国産より高いのに買いに来る人が多い」「日本産のシマアジも(韓国の)若者の間では『韓国産のブリと味が同じだ』と口コミが広がっていて人気がある」と話す。同市場の商人会の会長であり、「タンクッ村」という店の経営者でもあるチャ・ドクホさん(54)も「原産地が『日本産』と書いてあっても、汚染水や放射能について聞いてくる客はいない。マダイとシマアジは全部日本産だが、うちの店の売上トップ3に入る」と言った。
韓国海洋水産開発院の統計によると、今年上半期の日本産水産物の輸入量は1万8106トンだとのことだ。これは福島原発の放射能処理水海洋放出直前の昨年上半期(1万5994トン)に比べて13.2%増えた数値で、上半期基準で2017年(1万8399トン)以来の最高値だ。 品目別に見ると、ホタテ(5316トン)、貝類(2749トン)、タイ(2380トン)、ブリ(2004トン)、マイワシ(1103トン)の輸入量が多かった。
専門家らは「常識的に見てもとんでもないデマを拡散した政界や、これをむやみに支持した熱烈な支持層がどれほど国民の普遍的な常識と乖離(かいり)しているかを示している現象だ。デマの有効期間は1年にもならないことを現すはっきりした事例と言える」と話す。慶煕大学原子力工学科のチョン・ボムジン教授は「常識的に見て、日本が自国民に被害を与えるレベルの放射性物質を海洋放出するだろうか。当然の科学的真理を語る専門家たちまで親日・反日に分かれて陣営を分裂させた昨年の記憶は苦々しい」と話した。
キム・ビョングォン記者、カン・ジウン記者