社説
2006年北の核実験から18年たって初めて核攻撃を想定した対応訓練を実施する韓国【8月19日付社説】
韓国軍と米軍の合同軍事演習「乙支フリーダム・シールド(UFS)」が19日から始まった。今回の軍事演習には北朝鮮の核攻撃を想定した韓国政府の対応も訓練に組み込まれている。韓国軍合同参謀本部が明らかにした。具体的には住民の避難、被害地域の判断、死傷者の救助などの手順が確認される。住民の避難訓練には韓国軍も参加する予定だ。今年の演習は北朝鮮から核攻撃を受けた際の具体的な対応に慣れることが目的だ。
北朝鮮が最初に核実験に成功したのは2006年で、この時点から北朝鮮は韓国を攻撃目標とし、17年の6回目の核実験以降は堂々と「韓国を核で攻撃する」と脅迫している。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は核を使えば自らも無事ではいられないことを理解している。そのため実際に核兵器で攻撃を受ける可能性は非常に低いが、それでもその可能性が「ゼロ」と断言できる人間は一人もいない。そのため核は危険ではあるが、その一方で非常に効果的とも言える。
国民の生命と安全について最悪のケースを想定し、備えに取り組むことは韓国政府の基本的な責務だ。ところがこれまで韓国政府は北朝鮮の核の脅威を「存在しないもの」として対応してきた。そのような態度は戦略上必要なこともあるだろうが、今はもうそんな次元は過ぎた。文在寅(ムン・ジェイン)前政権は北朝鮮の核攻撃に備えるための訓練を「政府が先頭に立って危険を助長する」との理由で拒否した。核攻撃のリスクと不安は、顔を背けたからと言ってなくなるものではない。米国は1949年に旧ソ連が核実験に成功した翌1950年、核攻撃に備えた訓練について定める民間防衛に関する法律を制定した。それに対して韓国は北朝鮮が最初に核実験に成功してから18年が過ぎてやっと政府が対策と訓練を始めた。遅いと言えばあまりにも遅かった。
22日には全国民が参加する民防衛訓練が予定されている。空襲を想定した警報サイレンが鳴り、住民の避難や車の通行規制などの訓練が行われる。昨年6年ぶりに民防衛訓練が再開されたが、内容はあまりにもお粗末だった。空襲警報が鳴っても誰もが普通に通りを歩き、1200世帯のマンションの避難所に小学生が1人しか避難しないケースもあったという。政府はインターネットを通じて避難所の場所を告知しているが、実際に核攻撃を受ければインターネットが途切れる可能性が高い。韓国国民の核に関する知識は「無条件地下に逃げ込む」程度のレベルだ。具体的な避難方法やその場所を把握している国民もほとんどいない。核攻撃の際にサイレンが1分間、水が押し寄せるように鳴ることを知る国民もほとんどいないだろう。
米国や日本はもちろん、中国も核への対応などを国民に知らせているが、韓国だけは何もしていない。訓練の目的は、繰り返し行うことを通じて実際の状況でしっかりと行動でき、安全を確保することにある。政府はもちろん国民も核攻撃への備えに必要な実質的な知識を持って訓練に参加すべきだ。