▲イラスト=イ・チョルウォン

 昔プロレスのテレビ中継があると、町の人々はテレビのある家に集まった。スイッチを入れて30秒以上待たなければ画面が表示されない米ゼニス製真空管テレビを見た。当時はテレビがあるのは金持ちの家だった。テレビは時が流れるにつれ、金星社の白黒テレビ、サムスン電子のカラーテレビへと変遷した。韓国家電産業の発展と軌を一にしている。ところが、数年前に独立した息子が一人暮らししている部屋に行くと、テレビ、ワイヤレス掃除機、扇風機、除湿機は全て中国製だった。息子は「価格にも品質にも満足している」と話した。

 白物家電という言葉は英語の「White Goods」に由来する。 白物家電産業の初代帝王は米国だった。第2次世界大戦以降、冷蔵庫、洗濯機などの白色家電が米国の家庭に次々と普及したが、ゼネラルエレクトリック(GE)の家電製品は大半が白かった。清潔さを強調するのに適した色だったからだ。全世界の中間層はGE、ゼニスのテレビ、ワールプールの冷蔵庫、洗濯機に熱狂した。

 1980年代以降、白物家電の覇権は日本に移った。ソニーのテレビ、東芝の冷蔵庫がコスト競争力で米国を圧倒したためだ。1990年代からは韓国が白物家電が新興勢力として浮上した。 ラッキー金星(LGの旧名)とサムスン電子による激しい競争のおかげで、価格・品質競争力が高まった。テレビはサムスン、残る白物家電ではLG電子が世界首位に躍り出た。LGは2019年、ワールプールを抜き、世界トップの白物家電企業になった。

 最近は中国が白物家電の覇権を狙っている。中国業界首位の海爾(ハイアール)は、米GE、日本の三洋電機、イタリアのキャンディなど有名家電メーカーを買収し、世界市場を攻略している。成果も驚くべきものだ。中国の白物家電が日本では洗濯機、冷蔵庫市場の20%以上、韓国では高級ロボット掃除機市場の80%以上掌握した。中国のロボット掃除機の圧倒的な競争力は、人工知能(AI)、3Dセンサー、LiDAR(ライダー)など差別化された自動運転技術と価格競争力のおかげだ。

 LG電子が最先端ロボット掃除機の開発と生産を中国企業に委託したという報道があった。「技術格差」が生んだ提携という意味では苦々しい。最先端の中国ロボット掃除機は、白物家電の未来を示唆する。スマートフォンで遠隔操縦でき、外出時にも掃除、洗濯、冷暖房などあたゆる家事を自由自在にこなすことができるだろう。中国はAI、ビッグデータ分野で世界最高の技術先進国の一つだ。白物家電の覇権が米国、日本、韓国から中国へと西にシフトするのを防ぐことはできるだろうか。

金洪秀(キム・ホンス)論説委員

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