▲真実・和解のための過去史整理委員会(真実和解委)の金光東(キム・グァンドン)委員長が今年5月27日、ソウル市中区の同委で開かれた「真実和解委員会調査開始3周年記者懇談会」で発言している様子。/ニュース1

 真実・和解のための過去史整理委員会(真実和解委)は7日、1959年から84年にかけて在日朝鮮人9万3340人が北朝鮮へ送還された事件を「北朝鮮政権と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)による人権じゅうりん事件」と公式に規定した。在日朝鮮人の北朝鮮帰還事業に関連する韓国政府レベルの初の調査結果だ。真実和解委は、この過程で、帰還事業を傍観した日本政府、日本赤十字社、赤十字国際委員会(ICRC)にも責任があると判断した。

 真実和解委は今月6日の第84回委員会で「この事件は北朝鮮政権と朝鮮総連が事前に企画した事件」だと結論付けた。真実和解委が、送還された在日朝鮮人本人や子孫など27人の真実究明申請を受けて、当時作成された公文書、外交電文、関連書籍・論文などを検討・分析した結果、北朝鮮帰還者の大部分は「北朝鮮は地上の楽園」「差別がなく、働いた分だけ分配を受ける」「理想社会のように生きられる」「北朝鮮の方が日本より良い暮らしができて人権を保障される」という朝鮮総連の宣伝を信じ、北朝鮮へ移住したものと判明した。

 ところが実際に北朝鮮へ移住した在日朝鮮人たちは、平壌ではなく両江道恵山などへき地に配置され、居住・移転の自由を抑圧された。協同農場の農民、鉱山・炭鉱に従事する鉱夫、工場労働者として配置された在日朝鮮人たちは「成分(出身階級)調査」を通して敵対階層に分類され、徹底した監視と差別を受けた。在日朝鮮人の身内ではない者と結婚しようとした場合は強い反対にぶつかるなど、社会生活においても不利益を被った。

 真実和解委は「この事件の一次的責任は、組織的・体系的にうその宣伝を繰り広げ、個人の帰国意思確認の機会遮断、強制乗船、北送拒否者の拉致などを行った北朝鮮政権と朝鮮総連にある」としつつも「当時、日本政府と日本赤十字社は北朝鮮の現実と北送事業の実体を確認できたにもかかわらず、意図的に北送事業を支援・持続させ、北送者に対する北朝鮮政権の人権侵害を容認した」と指摘した。

 国連の資料を見ると、1945年の終戦当時、日本には240万人ほどの在日韓国・朝鮮人がいた。相当数が、日帝の強制徴兵・徴用などで連れてこられた人々だった。52年のサンフランシスコ講和条約に伴い、在日韓国・朝鮮人らは日本国籍を喪失した。この人々は日本国内で2等国民にも劣る扱いを受け、日本政府も在日韓国・朝鮮人を厄介者として扱った。

 59年に日本・北朝鮮の赤十字社は「在日朝鮮人の帰還に関する協定」(カルカッタ協定)を結んだ。一部の歴史学者らは、この事業の背後には日本政府がいた、という研究結果も残している。当時のICRCの資料を検討したテッサ・モリス・スズキ・オーストラリア国立大学教授(日本史学)は2007年、ウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿記事で、日本政府がICRCに圧力をかけて帰還事業を支援させたと主張した。

 当時の韓国政府は、帰還事業を「宣戦布告に準ずるもの」と見なすと通告するなど、阻止に向けて強力に乗り出した。真実和解委は「韓国政府は、結果的に北送を阻止できなかった」としつつ、韓国は北朝鮮政権に対して公式謝罪と帰還者の生死確認および移動の自由の保障を求めるべきだと勧告した。また、国連に対し、事件の実体を調査して結果を歴史記録に反映せよと要求した。

ソ・ボボム記者

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