▲建国大学スマート運行体工学科のパク・フンチョル教授が31日、カブトムシに似せた超小型ロボットを手に取っている。/ソン・ボッキュ記者

 ケニア情報部のエージェントがカブトムシのような形をしたロボットをテロ団体の本拠地に向け飛ばした。どう見ても昆虫であり、偵察ロボットと思う人は誰一人としていなかった。カブトムシ・ロボットは、建物に入って爆弾テロを準備する様子を撮影し、エージェントの携帯電話に転送した。すぐに武装ドローンがミサイルを発射し、建物を吹き飛ばした。2015年に公開されたスパイ映画『アイ・イン・ザ・スカイ(Eye In The Sky)」の一場面だ。

 映画の想像力を具現化する科学者がいる。建国大学スマート運行体工学科のパク・フンチョル教授(62)は、カブトムシだけを20年にわたって観察してきたロボット工学者だ。パク教授は1日、国際学術誌「ネイチャー」にカブトムシに似せた超小型ロボットを発表した。カブトムシは頭に長い角がある昆虫だ。パク教授はこれに先立って2020年には、カブトムシ・ロボットの飛行中の衝突実験を分析した論文を「サイエンス」に掲載している。カブトムシ・ロボットの研究で科学界の二大学術誌から認められるようになるまで4年とかからなかった。

 今回発表したカブトムシ・ロボットは重さが18グラムで、翼を完全に広げると幅が20センチになる。小型な上、遠心力と弾性力を利用して飛ぶため、エネルギーの消耗が少ない。31日、建国大学の研究室で出会ったパク教授は、カブトムシが飛ぶ姿を超高速カメラで撮影した映像を見せてくれた。定年退職を3年後に控えているが、カブトムシを見つめるまなざしは博士号を取ったばかりの若い研究者のように輝いていた。パク教授は「2004年から生物模倣ロボットを研究し始め、バッタや魚、テントウムシも並行して観察してきたが、中でもカブトムシに魅了された」とし「昆虫はそのほとんどがトンボやチョウのように翼を広げた状態で存在するが、カブトムシは飛ぶときにだけ外翼を持ち上げ、その中に折り畳まれていた中翼を広げるというのが不思議だった」と、その魅力について語った。

 カブトムシ・ロボットは飛行方法が効果的なだけに、大気密度が低い場所でも飛べる。パク教授は「小さな飛行ロボットだが、軍事偵察や極地、宇宙探査に活用される可能性が高い」と説明する。ロボットが飛行中に他の物体と衝突するとモーターが停止し、翼が下に折り畳まれた状態で着陸するため、破損しない。

 パク教授の5坪(1坪=3.3平方メートル)余りの研究室は、カブトムシの写真とロボットでいっぱいだった。2021年に科学技術情報通信部(日本の省庁に当たる)から受け取った「今月の科学技術人賞」の賞牌(しょうはい)も見受けられた。研究室の向かい側にあるパク教授の実験室は12坪程度だ。

 ロボット工学者は、生物学者のように昆虫の身体構造を把握するのにとどまることなく、ロボットとしての昆虫の動きを具現化しなければならない。昆虫の身体は解剖学的に明らかになっていない部分が多く、数千回以上動作を観察しなければ、力が伝わる過程を把握することができない。

 カブトムシは夜行性の昆虫なので、明るい場所では飛ばない。飛行映像を撮るためには狭い実験室で電気を消して長い時間、待つのが常だった。カブトムシを苦労して撮影した結果、映像に親しみを覚えるようになり、20年分の研究映像を全て保管しているという。

 カブトムシ・ロボット「KUビートル」を開発している最中も、研究費が十分だったことは一度もなかったという。3D(立体)プリンターで部品を直接製作し、天井に穴を開けて超高速カメラを設置するという「苦肉策」も随所に見受けられた。中国では、飛行ロボットを実験するために建物の1階を全て使用することもある。パク教授は「海外の研究陣が協業しようと訪ねてくるが、研究環境を見て驚いて皆去っていった」とし「冗談半分だが、おそらく全世界で論文当たりの研究費が最も安いのは私だろう」と笑った。

 パク教授は、KUビートルを軍事偵察や宇宙探査用として活用するため、今も研究を行っている。映画に登場する最先端ロボットを韓国が保有する未来は、そう遠くないわけだ。パク教授は「どんな研究でも少なくとも10年以上、着実にこなしてこそ結果が出る」とし「退職まで3年あるが、力が及ぶ限りカブトムシ・ロボットを活用できるよう研究を続けていくつもり」と抱負を語った。

ソン・ボッキュ記者

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