▲イラスト=UTOIMAGE

 中国が自国の漁船を南米、アフリカ、太平洋、中東など全世界の国々の現地企業名義で虚偽登録する手法で現地当局の監視を避け、主な漁場で乱獲に及んでいることが分かった。大規模船団を組んだ中国漁船の違法操業に対し、各国が大規模な軍事力を動員して取り締まりに乗り出したことから、国際社会の耳目を避けるためにそうした「小細工」をしていると分析されている。

 中国漁船の違法操業活動を追跡してきた米非営利メディア団体「アウトロー・オーシャン・プロジェクト」(本部ワシントン)は4日、中国企業が南米、アフリカ、中東、南太平洋など15カ国で中国漁船249隻を現地企業に所属しているかのように登録した上で操業していることと明らかにした。本紙が同団体から入手した中国漁船の名前と所属企業、識別番号などを分析した結果、問題の漁船はアルゼンチン、ガーナ、セネガル、イラン、ロシアなどの国旗を掲げて操業しているが、実際の所有者は全て中国企業だった。現地企業の名義を使っているものの、株式の過半数を保有したり、現地人に漁船を貸し、収益は持っていくといった手口を使っていた。こうした手法は多くの国々で外国籍船舶の操業、外国人船主の登録を禁止する規定を回避する脱法・不法行為とされている。

 アウトロー・オーシャン・プロジェクトは「中国企業が現地法人として登記後、外国の国旗を掲げて活動するいわゆる『フラッギングイン(flagging-in)』方式で世界各地の操業で支配権を急速に拡張している」と指摘した。中国はこれまで他国の水域に侵犯し、大規模な乱獲に及んだ末に逃げ去るという違法操業を行ってきたが、現地当局の取り締まりを回避するために、さらに巧妙な手法を用いている格好だ。中国の遠洋漁船は現在3000隻を超えると推定される。その10%に近い漁船(249隻)がフラッギングイン方式で摘発を避けていることになる。

 中国がそうした「小細工」を通じ、最も活発に進出した国は南米アルゼンチンだった。中国漁船65隻がアルゼンチンの国旗を掲げて漁業をしており、同国のイカ漁船全体の90%に占める。アウトロー・オーシャン・プロジェクトが現地メディアが報じた約10人の船員名簿を分析した結果、アルゼンチン海域で操業する漁船では労働者の4分の1以上が中国国籍であることが分かった。事実上、中国漁船がアルゼンチンのイカ漁場を独占している形だ。それ以外にガーナ(70隻)、セネガル(13隻)などアフリカ諸国、ミクロネシア(16隻)など太平洋諸国、イラン(11隻)など中東地域にも中国漁船が進出し、それぞれの国旗を掲げて海洋資源を乱獲している。

 中国は2000年代以降、経済成長で水産物の需要が増大すると、本格的に遠洋漁業に参入した。群れを成して網を下ろし、手当たり次第に魚を取り尽くす中国の漁船団を全世界が恐れている。多くの国は自国海域にミサイルを搭載した艦艇を配置し、違法な中国漁船を沈めることもあったが、違法操業の規模を拡大を続けている。

 中国は全世界で漁獲した水産物を韓国にも大量に輸出している。中国は2022年から昨年末までの2年間にアルゼンチン、ガーナ、モーリタニアの3カ国で漁獲した1058トンのマグロ、イカなどを韓国に輸出した。アウトロー・オーシャン・プロジェクト関係者は「韓国も中国による違法操業の主な被害国だ」とした上で、「違法操業被害国の消費者が中国が他国から事実上略奪した魚を消費している皮肉な状況だ」と説明した。

 中国がアフリカ、南米、太平洋のあちこちに自国漁船を進出させているのは、対象国の港湾に対する支配権を強化し、長期的には洋上での軍事的影響力も高める意図もあるという分析が示されている。これまで中国指導部は「一帯一路(現代版シルクロード経済圏構想)」事業に関連する民間プロジェクトをテコにしながら、他国で軍事拠点の確保に努めてきた。中国は巨額の建設資金を貸し出し、港湾を整備してから、債務が膨むと港湾の運営権を奪い、商業港を軍事基地に転換する方式を用いている。

■フラッギングイン方式とは

 船舶を外国法人の名義で登録した後、その国の領海で活動することを指す。船舶に外国の国旗を掲げて偽装するため、「フラッギングイン」と呼ばれる。現地人が代表を務める体裁を取りながら、現地企業の過半数株式を保有したり、現地人に船舶を貸し、その収益を丸ごと持っていく手法などがある。フラッギングイン方式を用いれば、外国籍船舶による操業、外国人船主登録などを禁止する現地規定を回避することができるため、多くの国が脱法・不法行為と見なしている。

ワシントン=イ・ミンソク特派員

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