▲2005年11月6日、故国の地を踏んだロバート・キム、チャン・ミョンヒ夫妻が、入国後に記者会見を行っている様子。/趙寅元(チョ・インウォン)記者

 韓国と米国の市民権者であるロバート・キム(韓国名:キム・チェゴン、84)は、米海軍情報局の軍属だった1996年、「江陵武装ゲリラ潜入事件」の際に北朝鮮潜水艦の動向など米国の軍事機密およそ30件を韓国大使館に提供してスパイの疑いをかけられた。

 ロバート・キムは当初、法廷で「友邦である韓国が知ってもよいはずの通常の資料を渡した」として容疑を否認したが、その後、有罪を認める代償として間諜(かんちょう)罪より相対的に刑が軽い「機密流出」の罪の適用を受け、懲役9年・保護観察3年を言い渡された。ロバート・キムが流出させた文書は、米国の国防に実質的な害悪を及ぼしかねない内容ではなく、彼が韓国政府から何の代価も受け取っていない点も考慮されたという。米国の検察は当初、被告を間諜法違反(間諜罪)でも起訴したが、間諜罪で有罪判決が出た場合、最高で終身刑まで言い渡されることもあり得た。

 韓国法曹界からは「ロバート・キムが韓国で起訴されていたら、執行猶予程度の処罰にとどまるだろう」との声が出ている。「敵国」に該当する北朝鮮ではない別の国というだけでなく、友邦国に軍事機密を流出させた場合、刑法・軍刑法上の間諜罪や国家保安法違反の罪ではなく、「軍事機密保護法違反」の罪が適用される。軍事機密保護法において、軍事機密を違法に探知・収集した場合は最大で10年以下の懲役、流出させた場合は3年以上の懲役を言い渡すことができるようになっている。だが初犯で、容疑の内容が重大ではない場合、大抵は執行猶予が言い渡されるという。公安分野の捜査経験が豊富な、ある元職の次長検事は「わが国は他国に比べ、軍事機密流出事件に対する量刑が低い」と語った。

 実際、1993年に日本のフジテレビの篠原昌人・ソウル支局長が、韓国軍将校から軍事機密資料を受け取り、駐韓日本大使館の防衛駐在官に渡した疑いで起訴されたが、二審で執行猶予を言い渡されて国外追放になった。韓国型攻撃ヘリ事業に関する機密を米国の防衛関連企業に渡した武器仲介業者も、2015年に軍事機密保護法違反の罪で起訴されたが、執行猶予を言い渡されるにとどまった。

ユ・ジョンホン記者

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