社説
暴力デモを引き起こすフェイクニュース、英国より韓国の方が危険かもしれない【8月6日付社説】
英国で「ムスリムの移民が児童3人を凶器で殺害した」というフェイクニュースが広がり、暴力デモが全国で起きている。英国政府が「容疑者はイスラム教徒ではない」と繰り返し発表したにもかかわらず、デモ隊は「事実」よりも、自分たちが信じたい「偽情報」の方を信じて警察を攻撃した。
7月30日、リバプール近郊にあるサウスポートで児童3人が死亡する襲撃事件が起きた時点では、全国的なデモが起きるとは誰も予想していなかった。ところが、ソーシャルメディア(会員制交流サイト)に「犯人はイスラム教徒」「シリア出身の不法滞在者」などのフェイクニュースが載り、偏向した人種主義を持つ有名人がこれを拡散したことで、興奮した群衆が街を燃やし、石を投げた。英国政府が「容疑者はキリスト教国のルワンダ出身の両親を持つ英国生まれの人物で、ムスリムではない」と異例の公開を行ったにもかかわらず、暴力デモは収まらなかった。反移民・反イスラムの雰囲気にフェイクニュースが火を付け、無分別に燃え上がったのだ。
フェイクニュースはテロと同じくらい脅威的だ。昨年5月、米国防総省の庁舎近辺から大きな爆発で黒い煙が立ち上っている「フェイク写真」がソーシャルメディアを通して急速に拡散し、米国の株式市場が揺らいで金や国債の価格が上がるなどの混乱が起きた。ホワイトハウスが火災に巻き込まれているイメージもばらまかれた。AI(人工知能)が作ったフェイク画像だった。ハマス戦争、ロシア・ウクライナ戦争を巡るニュースは、本物よりもフェイクの方が多いほどだ。真実が覆い隠され、虚構がまん延している。
韓国社会は、とりわけフェイクニュースに脆弱(ぜいじゃく)な体質だ。既に狂牛病(牛海綿状脳症・BSE)、哨戒艦「天安」爆沈、THAAD(高高度防衛ミサイル)、福島原発汚染水デマなどが猛威を振るってきた。主要政党や政治家が積極的にフェイクニュースをばらまいている。うそだと判明しても謝罪や退場はせず、強硬な支持層から支持されている。フェイクニュースが社会に害悪を及ぼしても、ソーシャルメディアやユーチューバーなどはむしろカネを稼ぐ。二極化と相手陣営への憎悪が深刻な韓国社会においては、巧みに紛れ込んだフェイクニュースが英国デモよりも大きな暴力と混乱を呼びかねない。韓国の現行法上、個人のユーチューブは放送法の適用を受けず、言論仲裁の対象からも外れている。ポータルサイトやソーシャルメディアもフェイクニュース流通の「宿主」の役割を果たしているが、言論機関ではないとして責任を避けている。フェイクニュースの流布者、これを伝えるポータルやソーシャルメディアなどが負うべき責任を強化しなければならない。