経済総合
「K-POP聖地の夢を返して」 協定解除で好立地エリアに錆びた骨組みだけが残った /高陽
「地元に世界的なK-POPアリーナができると思い、騒音やほこりを我慢したのに、期待だけさせておいて、計画が失敗に終わるなんて」
京畿道高陽市一山東区獐項洞で出会った地元住民イ・ドンギュさん(47)は、「最近、腹が立つ」と話した。その理由は「CJライブシティー」事業だ。CJがキンテックスと一山湖水公園周辺の面積32万6400平方メートルの敷地に2兆ウォン(約2180億円)以上をかけ、世界最大のKポップアリーナとスタジオ、ホテルなどを整備する事業だ。「Kカルチャーバレー整備事業」とも呼ばれる。
今年7月1日、京畿道がCJ側と協定を解除し、事業が8年目で白紙化された。京畿道は自治体主導で事業を推進すると発表したが、地元に大きな影響を及ぼしている。地元住民は「高陽にライブシティーを返してほしい」「当初計画通りに推進しろ」と反発している。高陽市のあちこちに「CJライブシティー原案が答えだ」「CJライブシティーアリーナ断念決死反対」などと書かれた横断幕も掲げられた。住民らは京畿道庁前で集会も開いている。 京畿道民請願サイトには7月1日に詳細な説明、再検討、経緯の開示を求める請願があり、半月で1万人が賛同した。それを受け、京畿道が7月16日、「(CJが推進していた)原案のまま迅速に推進する」と表明したが、住民の不満は収まっていない。
一山連合会のカン・テウ常任代表は「CJライブシティー事業は100万高陽市民にとって念願の事業だ」とした上で、「住民の意見を集約し、非常対策委員会を設置して本格的に対応していく」と話した。
記者は7月31日に獐項洞のCJライブシティー建設現場を訪れたが、砂ぼこりだけが漂っていた。「K-POPの聖地」になると期待を集めたアリーナの姿はなく、真っ赤にさびた建物の骨組みしかなかった。今年6月の完成を目標に3年前の2021年10月に着工したが、工事進捗(しんちょく)率は3%前後だ。CJが工事費の上昇などで資金難に苦しみ、昨年4月以降、工事が中断されている。近くのマンションに住む住民のLさん(62)は「マンションだけが立ち並ぶ高陽で最後に残った好立地がここだ。世界的なアリーナで観光客を呼べると期待したが、かえって厄介物になった」と話した。
住民が騒ぎ始めると、地元政界も加勢した。与野党が対立していた高陽市議会は7月30日、満場一致で「K-カルチャーバレー完成のための特別委員会」を設置した。市議会レベルで事業を再推進する方策を探っていく。副委員長の孫東淑(ソン・ドンスク)市議(国民の力)は「公営で開発すれば、予備妥当性調査だけで2~3年かかる。周辺都市がK-POP公演施設を建てようと争っているが遅れてはならない」と述べた。ソウル市とカカオは7月2日、道峰区倉洞に「ソウルアリーナ」を着工した。仁川市と京畿道河南市もK-POP公演施設の整備事業を推進している。
京畿道とCJライブシティーによる紛争は長期化の兆しを見せている。CJライブシティーが7月9日、京畿道に協定解除の見直しを求めたが、道側は拒否した。法的紛争に発展する可能性が高い。協定解除の原因だった工事遅延賠償金を巡り、CJ側は減免を要求している。許認可や電力供給などの問題で工事が遅れたとの主張だ。一方、京畿道は受け入れ不可能という立場だ。工事遅延賠償金は1000億ウォン程度と推定される。
京畿道は公営事業として推進すると言ったが、CJ側が建設した施設の扱いも問題となる。協定を解除した場合、施設を撤去して原状回復するのが原則だが、CJが公営による開発に参加し、京畿道と寄付採納で合意することも可能だ。業界は原状回復費用が700億ウォンに達すると試算している、CJにとっては、過去8年間に投下して、事業中止で回収不能となる「埋没費用」が7000億ウォンに達すると推定されることも負担だ。
請願に参加した住民が1万人を超えたことから、今月19日に金東兗(キム・ドンヨン)京畿道知事が何らかの立場を表明するとみられる。京畿道関係者は「CJは工事遅延賠償金の減免という無理な要求を突きつけるなどしており、事業推進意思があるのか疑問だ。公が責任を持って推進しようとしている」と語った。
高陽=キム・ヒョンス記者