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 中国の就活生たちが最高で4万8800元(約103万円)に達する多額の金銭を支払い、インターンの職に就いている。今年だけで大卒者1200万人近くが求人市場に流入し、就職難が深刻化していることから、少しでも良い職場を得ようと、金銭でインターン歴を買っているのだ。しかし、そうした「有料インターン」は就職市場を歪めるほか、法的に保障された制度でもないため、詐欺などの被害が相次いでいる。これを受け、中国政府も関連制度の整備に乗り出した。

 現地メディアの中華網は7月29日、中国で最近、有料インターンが登場し、社会の関心を集めていると報じた。 仲介業者に金銭を支払い、希望する業種や企業に提出する公式推薦書を受け取り、数週間以内にインターンに合格するという流れだ。中華網は「インターンの枠が不足しており、競争が激しい人気業種、都市ほどそうした有料インターンが盛んに行われている」と伝えた。

 有料インターンの価格には大きな差があるという。経済メディア「中新経緯」が求人プラットフォームなどを通じて確認した結果、リモートによるインターンは8000~1万6000元、直接出社するインターンの場合は1万7000~2万6000元が相場だ。ティックトックの親会社であるバイトダンスに実際に出社するインターンは3万6800元だが、夏休み・冬休み期間には2万9800元であっせんを行う業者も見られた。

 中国国内の企業に限られていた有料インターン最近、外国企業や国際機関にまで拡大する傾向を見せている。21世紀経済報道は「多くの大卒者が就職で競争力を強化するため、厳しい条件にもかかわらず、海外でのインターンに参加している」と報じた。北京のある機関は、影響力がある国際機関のインターンを仲介する料金として、4万8800元を要求している。それも講義の受講や小規模の国際機関でのインターンなどを経て、英語能力試験IELTS(アイエルツ、国際英語試験体系)のスコアが一定レベルに達する必要がある。

 インターンの枠は少ないものの、金銭を払うことはない韓国とは好対照だ。中国の就活生が多額の料金を支払ってでもインターンに参加するのは、ますます悪化する就職市場と関係がある。中国国家統計局によれば、16~24才の学生を除く青年失業率は6月時点で13.2%となり、年初来最低だった。しかし、これは中国政府が数値を最大限抑えるために統計基準を見直したことによるものであり、現実の失業率ははるかに高いとの見方が有力だ。今年の大学新卒者だけで1179万人に達し、就職はますます困難になっている。

 こうした状況で有料インターンは就活生の必須コースとして位置づけられている。競争を勝ち抜くためにはインターンのような実務経験が求められるが、有料インターンは最も簡単にそうした条件を満たすことができる手段だからだ。あるメディアは「名門大学を卒業していなくても、インターンで履歴書を補完すれば、名門大学卒業生並みの職に就けるという認識が広がっている」と分析した。

 問題は有料インターンの副作用を無視できないことだ。まず、就職市場の不平等が広がる可能性がある。最低でも数千元、多い場合は数万元に達する金額を就活生が直接負担することは現実的に難しい。結局、両親の支援が必要となるが、経済的に厳しい家庭の就活生は競争から弾き出されてしまう。中華網は「就職市場の公正性を阻害し、経済的能力が弱い学生が競争で不利になり、社会的資源の不平等な分配が深刻化する恐れがある」と指摘した。

 有料インターンが法的には認められていない制度である点も不安要因だ。中国教育部はインターンの過程で手数料を請求できないと明確に規定している。しかし、制度を悪用する仲介業者もかなり存在する。経済メディアの新浪財経は就活生Yさんのケースを集中報道した。Yさんは仲介業者を通じ、公式推薦書と就職前教育、インターン証明書の受領などワンストップサービスを1万6100元で予約。うち40%に相当する6440元を先払いした。その後、仲介業者は実際かかる費用は2万3170元だと説明を変えた。Yさんは払い戻しを要求したが、1カ月が過ぎても金銭を返してもらえなかったという。

 価格をつり上げるケースのほか、当初約束した企業とは全く異なる企業のインターンを紹介してくるケースも多いという。これに関連し、中国IT大手騰訊(テンセント)と証券最大手の中信証券(CITICセキュリティーズ)、大手会計事務所などは「有料インターンは受け入れていない」「インターン詐欺に注意を」などと公式に警告している。 中華網は「一部の仲介業者は誇大広告を行っているほか、ひどいケースでは詐欺まで働いている」「学生の就職熱を利用し、不法に金銭を稼ぐために不道徳な業者と協力している」と指摘した。

 中国国内では大学生や就活生を対象とするインターン制度の確立が必要だという認識が広がっている。21世紀経済報道は「中国ではまだインターンの慣習がまだ完全にはシステム化されていないため、有料インターン産業が登場した」と指摘した。これに関連し、7月18日に閉幕した中国共産党の第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では、学生のインターン実習システムの改善についても話し合われた。

北京=イ・ユンジョン特派員

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