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 今年11月の米大統領選を控え、中国国営新華社通信傘下のメディア、参考消息は最近、「西側の政治体制失敗の根本原因分析」と題する記事でそう評した。この記事は「西側社会のエリートは内部闘争に没頭しており、社会崩壊の問題を解決する能力がない」と書いた。また、一時、自由民主主義を人類が成し遂げた最終政治体制だと規定した日系政治学者フランシス・フクヤマが過去の発言を後悔し、「国家の処理能力強化」が必要だと認めたと主張した。

 米大統領選で混乱が続く中、中国はそれを自国の政治体制を擁護する機会に利用している。2016年の米大統領選については「失望、挫折、信頼喪失にまみれた選挙」(人民日報)と評し、2020年には「米国史上最も分裂した選挙だ」(新華社)とした中国だ。今年は当初から「西側政治体制の崩壊」を強調し、非難のレベルを引き上げている。

 また、中国公式メディアは、誰が米大統領に当選しても「弾圧と抑制」という対中政策の基調は変わらないと診断し、米大統領選の候補全員を非難している。雑誌エコノミストが最近、「中国は米大統領選の悪夢を楽しみと不安の中で見守っている」と評したほどだ。

 6月27日、バイデン大統領と共和党大統領候補のトランプ前大統領によるの1回目のテレビ討論が行われた際、中国の習近平国家主席は直接メッセージを出した。習主席は北京の人民大会堂で6月28日に開かれた「平和共存5原則発表70周年記念大会」の演説で「中国の力が増えると、世界平和の希望も増えていく」と演説した。

 同日、微博(ウェイボー、中国版X)では、バイデンとトランプの討論について、「棺桶に入るべき二人が戦っている」「西側政治が終末を迎えた」という投稿に数千万回のアクセスが集まった。新華社も「米大統領選の討論を見るぐらいなら、サッカーの試合を見る」と書いた。

 トランプ前大統領の銃撃事件が起きた際、環球時報は7月15日のコラムで「米国政治の二極化、政治暴力の背景には、米国社会の深刻な貧富の差がある。米国が政治の二極化を改善できない場合、政治暴力の悪循環と社会不安定が続くだろう」と批判した。

 7月21日、バイデン氏が大統領選候補を辞退する方針を表明し、ハリス氏が事実上の民主党候補となると、中国メディア「ZAKER」は「結局米大統領選で競うのは知名度であり、誰が出るかは重要ではない」と評した。新華社系の週刊誌「瞭望」は「トランプとハリスの対決は分裂した『二つの米国』を示すものだ」と書いた。

 エコノミストは、中国は米国との関係を改善しようとした1980年代までは米大統領選を肯定的に評価したが、米国が国際社会の構図を「民主主義対権威主義」と規定すると態度が変わったと指摘した。1988年に共和党のブッシュ氏と民主党のドゥカキス氏が争った米大統領選では、民主党がアトランタで開いた党大会に中国代表団12人を派遣した。1988年、全米政治学会(APSA)の招きで6カ月間米国で大学の訪問教授を務めた王滬寧・現人民政治協商会議(政協)主席(中国序列4位)は1991年に出版した本で、米大統領選での討論について「この手続きは非常に興味深く、開放性が高い」と評価した。

 しかし、中国はもはや気楽に米大統領選を「見物」することはできない立場に置かれている。米国では二大政党がいずれも中国に対するけん制と抑制が重要だと考えており、自由主義秩序を脅かす主要勢力として中国を挙げているからだ。中華圏メディアは「対中問題でハリスはさらに一貫してバイデンの政策を継承し体系化し、中国を圧迫するだろう」と分析した。

 トランプ氏による2期目の政権が発足する場合には、不確実性が高まることが問題だ。中国の不公正な貿易慣行を非難し、関税のハードルをさらに上げ、果敢な外交政策を展開することを懸念する。トランプ前政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたロバート・オブライエン氏は先月、外交専門誌フォーリン・アフェアーズで「習近平は毛沢東以来、中国で最も危険な指導者」だと評価し、「米国は冷戦時代にソ連経済を弱体化させようとしたように、中国にも行動を取らなければならない」と述べた。

北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員

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