▲イラスト=UTOIMAGE

 盗作論争が起きた今年の蔚山美術大展の一部受賞作品を巡り、地元芸術団体や専門家らは「盗作なのだから受賞を取り消すべき」という立場を表明したのに対し、主催側の蔚山美術協会は「受賞を取り消すほどの明白な盗作とは見なし難い」という相反する立場を示し、論争は鎮まる気配を見せていない。

 蔚山民族芸術人総連合(蔚山民芸総)と蔚山民族美術人協会は7月23日に見解を出し「問題になった一部の受賞作品は明白な盗作」だとし「受賞者が活用したイメージは明らかに、あるサイトに存在する。それをパロディー化したり再創造するのではなく、ほぼそのまま描いたのだから、誰が見てもパクリ」と主張した。

 蔚山美術協会が主催し、蔚山市・韓国美術協会が後援する今年の蔚山美術大展の公募には、計693点が出品された。この中で最優秀作に選ばれた「雨が降った後」と、入選作の「舞鼓の踊り」「Teapot II」が、ウェブ上の画像を収集するウェブサイト「ピンタレスト」のイメージと酷似しており、盗撮疑惑が持ち上がった。

 これらの団体は「絵を模写するのは創作のための練習であって、自身の創作物とは言えない」と指摘した。さらに「現代美術は多様に変化し、人工知能(AI)が登場したが、盗作行為は誤った創作形態」だとし「事態の原因は主催側の不注意というより、創作者の誤った創作形態にある。誤った慣行にならないように、蔚山美術協会がきちんと結論を下してほしい」と表明した。

 専門家らも同様の立場を示した。

 任英宰(イム・ヨンジェ)蔚山大学美術学部教授も、本紙の取材に対し「盗作にならないようにするためには形式・内容面で原作と違うようにすべきだが、そうした部分がほとんどなく、盗作に見える」と語った。「このごろの若いアーティストや学生たちは、ピンタレストなどオンラインのイメージをかなり参考にする。そこからヒントを得ることはできるが、公募展に出して賞を取るのは別の問題」と指摘した任教授は「審査の過程で多くのイメージを物理的に探し出し、取り除くのは現実的には不可能」「問題は、審査後にこうした問題が現れたのに、受賞取り消しなどの対応を行わないこと」と述べた。

 美術評論家のパン・イジョン氏も「問題になった諸作品は、全体的な構成やオブジェ、背景の色彩などがほとんど同じで、盗作と考えるのが当然のように思う」とし「原本となった写真や絵画作品をほんの少し変えただけで、ほぼ引き写しのごとく描いており、盗作や著作権侵害である余地が大きい」と語った。

 パン氏は「最近のアーティストの創作環境は昔とは違っており、盗作かそうでないかについての基準が鮮明だった昔とは違っている部分は、明らかにある」「インターネット上のイメージを使うことについて、特別な問題意識を感じないケースもある」としつつも「出典がないイメージをそのまま持ってきて作品を作っていたら、盗作や著作権侵害になることもあり得る。実際、オンラインのイメージを使って問題になったアーティストもおり、使用に留意すべき」と語った。

 しかし、蔚山美術協会は「受賞を取り消すほどの明確な盗作とは見なし難い」という立場を取った。

 蔚山美術協会は23日、協会ホームページに載せた「第28回蔚山美術大展運営委員会の結果」と「美術大展審査委員会議」という記事で「問題になった各受賞作を2度再審査して、運営委員会の討論も行ったが、受賞を取り消すほどの盗作だという客観的根拠がない、という結論を下した」と表明した。

 この記事で審査委員らは「絵画の造形や構図は同じに見え、全体の印象で見ると類似の部分が多く見える」としつつも「細部の描写において各受賞作は、面を断ち色を再解釈したり、部分的に組織を解釈したりする点で個人の創意が見えるなど、再現的美術の観点から創作が入っているとみられる」と表明した。また「一部作品の場合、元の写真の形態に見当を付けることができず、盗作と見るにはあいまいな部分もある」と述べた。

 受賞を取り消すかどうかについても「純粋創作美術の盗作、模倣などについては法的根拠がなく、受賞取り消しの論拠が足りない」とし「断定的な結論で受賞を取り消したら蔚山美術協会が法的責任を負うことになりかねず、被害者も生じかねないので、賞を取り消すのは無理がある」とした。

 蔚山美術協会のキム・ボンソク会長は「審査委員や運営委員は、盗作論争が起きたことには十分共感した」としつつ「だが、アーティストが参考にしたピンタレストのイメージの場合、世界に数億枚のイメージがあるというのが事実」と語った。

 キム会長は「私どもの職員が数日間、問題が提起された諸作品の元のイメージをこのサイトで探してみたが、原作者の著作権などを確認できなかった」とし「加えて、明白に盗作や著作権侵害だと見なし難い部分があり、急変する現代美術の特性上、盗作かどうかについての判断を下すのは容易ではなく、受賞取り消しもしないことにした」と伝えた。

 なお、キム会長は「今後同様の事件が生じた際に盗作や著作権侵害になりかねない作品を審査から除外することができるさまざまな方法を考究していく」とコメントした。

蔚山=キム・ジュヨン記者

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