韓国の二大インターネット企業であるネイバー、カカオの経営に赤信号が灯った。表面的にはネイバーの「LINEヤフー問題」とカカオの創業者拘束など予想外の事態が危機原因と言える。しかし、インターネット業界では、グーグルやメタ(フェイスブックの親会社)のような世界的ビッグテックが人工知能(AI)など革新的技術で攻勢を繰り広げており、それに対抗し得る革新がない状況の方が大きな危機とみられている。

 ネイバーとカカオは、米国のビッグテックが全世界を席巻している状況で、閉鎖的な中国を除けば、自国のプラットフォームを展開している企業だ。しかし、最近は検索・メッセンジャー市場でシェアの低下を経験し、苦戦している。カカオの株価は3年間で4分の1に暴落し、ネイバーの株価も同じ期間に60%以上下落した。業界関係者は「欧州のように海外のビッグテックに国内のプラットフォーム市場が完全に侵食される懸念が高まっている」と話した。

■新事業・海外いずれも不振

 韓国で市場を独占して成長してきたネイバーとカカオに残された危機の突破口は、新事業開拓と世界進出だ。しかし、これまでこれといって成果を出せずにいる。

 カカオは新事業であるゲームやストーリー、メディアなどコンテンツ部門で成長が停滞したり売上が落ち込んだりしている。日本の漫画アプリ市場を掌握し、カカオの海外における最大の実績とされていた系列会社カカオピッコマも5月、「市場の成長鈍化」を理由にフランス市場から撤退した。未来の成長エンジンと位置づけたAI技術(KoGPT)はまだ公開されていない。カカオの昨年の営業利益は前期比11%減少した。それでもカカオトークのプレゼント機能などメッセンジャーを活用したコマース・広告事業が善戦している。

 ネイバーの事情もそれほど変わらない。ネイバーによる海外進出の代表事例である日本のLINEヤフーは最近、海外のプラットフォームを警戒する日本政府との摩擦で市場拡大が容易ではない状況だ。ネイバーにとって最大のジレンマは人工知能(AI)モデルだ。累計で1兆ウォン(約1100億円)以上を投資し、昨年生成 Iモデル「ハイパークローバーX」を投入した。しかし、数十兆ウォンの資金をつぎ込むビックテックとの競争は容易ではない。成果がないまま「金食い虫」に転落しかねない。生成AIソリューション事業を担当するクラウド部門の売り上げは、今年第1四半期には1170億ウォンにすぎなかった。ネイバーが毎年AIハードウェアに7000億ウォン以上を投資していることを考えれば、前途は遠い。その影響でネイバーの営業利益率は2021年に20%を割り込み、昨年は15.4%に低下した。業界関係者は「米国のオープンAIやグーグルなどが巨額を投資して開発している巨大AIモデルとの性能競争に限界はあることは否めない」と話した。さらに、ネイバーがAIと並んで注力する電子商取引(EC)事業もアリ、TEMUのような中国系EC企業の攻勢で成長が鈍化している。ネイバーの今年第1四半期のEC取引額は前年同期比で6%増加した。しかし、オンラインショッピング市場全体での取引額の伸びが9%だったことから、市場競争力で押されている格好だ。

■韓国市場でも揺らぐ地位

 明確な未来戦略を示せない状況で、本丸である韓国の国内市場でも地位が揺らいでいる。ネイバーは事業の中核である検索市場で10年前までは80%をシェアを記録していたが、現在は60%以下に低下した。ウェブサイト分析業者のインターネットトレンドによると、今月のネイバーの検索エンジン市場におけるシェアは55.9%で2位グーグル(35.6%)との差がますます縮まっている。

 4700万人以上が使用し、韓国最多の月間アクティブユーザー数を誇っていたカカオトークもユーザーが200万人以上減り、昨年12月に初めてグーグル系の動画投稿サイト、ユーチューブ(4565万人)に首位の座を譲った。10代など若年層を中心にソーシャルメディアのインスタグラムに付属するメッセージ機能の利用が広がり、海外のプラットフォームにユーザーを奪われたためだ。

安相炫(アン・サンヒョン)記者

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