病院で子どもが生まれたら、関連情報が地方自治体に自動的に通知される「出生通報制」が19日から施行される。また、女性が仮名により病院で出産できる「保護出産制」も同時に施行される。新生児登録と女性の安全な出産について国が責任を負うシステムが整えられたということだ。

 出生通報制と保護出産制はいわゆる「消えた子ども」を出さないようにするためのものだ。これまでは病院で出産しても、親が出生届を出さなければ国は出生の事実を知ることができなかった。韓国監査院が昨年監査した結果、2015年から22年までに生まれたが、出生届が提出されず、国の保護を受けられない「未登録乳幼児」は2236人に達することが明らかになった。また、こうした調査の過程で乳児殺害・遺棄事件が相次いで発覚した。このような悲劇を防ぐため、政府・国会が共に出生通報制と保護出産制を導入したものだ。

 19日から、病院は子どもが生まれたら出生の事実、母親の氏名、出生日時などの情報を地方自治体に通知する義務を負うことになる。病院が電子システムに子どもの情報を入力すれば、自動的に自治体の家族関係登録システムにも伝わるようになる。

 自治体に伝えられた情報は、親が出生届を出さなかった時に使われる。病院で出生情報を自治体に通報した後、1カ月以内に親が出生届を出さなければ、自治体は7日以内に親に出生届を出すよう通知する。その後も親が出生届を出さなければ、自治体が裁判所の許可を得て、職権で出生登録することになる。出生届を親だけに任せておくのではなく、病院と地方自治体が自ら立ち上がるということだ。

 出生通報制の問題点を補完するための「保護出産制」も同時に施行される。出生通報制だけが施行されると、身元が明らかになるのを嫌う妊婦が「病院外出産」に追い込まれる可能性があり、捨てられる赤ちゃんがさらに増えるとの懸念があった。保護出産制は経済的・社会的理由で子どもを育てるのが困難な妊婦が仮名により病院で出産できる制度だ。妊婦は保護出産を申請する前に養育支援制度や親権放棄が子どもに及ぼす影響などについて相談を受けなければならない。相談後も妊婦が保護出産を希望すれば、仮名と住民登録番号の代わりとなる管理番号が作られ、妊婦はこれを利用して身元を明らかにせずに病院で出産することになる。その後、子どもは保育施設や委託家庭で保護し、養子縁組が進められる。

 妊婦は保護出産を申請する際に、氏名・連絡先・保護出産を選択するまでの状況などを記録しなければならない。同記録は韓国保険福祉部(省に相当)傘下の児童権利保障院に永久保存される。子どもが成人に達した時や、未成年者でも法定代理人の同意がある場合は該当の記録の公開を要請できる。母親が同意すれば書類全体が公開され、同意しない、あるいは同意の有無が確認できない場合は人的事項を除き、保護出産を選択した理由などだけが公開される。

 保護出産を申請した後に出産しても、母親が子どもを本当に国に任せるかどうかを熟考するため1週間という時間が与えられる。子どもが将来、養子縁組の許可を受けるまでは、保護出産を撤回することができる。

 だが、一部には「保護出産制が導入されると、『隠れ出産』や『養育放棄』の事例が増える可能性がある」との指摘もある。また、「障害児や未熟児を合法的に捨てる経路になる」という懸念があるのも事実だ。しかし、保健福祉部の関係者は「今は突然の妊娠と出産に当惑して子どもを捨ててしまうケースが多いが、保護出産制を通じて政府が十分に相談し、支援制度を伝えれば、むしろ子どもを育てようと考えるケースが増える可能性がある」と語った。

 政府は困っている妊婦がいつでも相談できる相談電話(1308)も設けた。支援が必要な場合は直接妊婦に会ったり、生計・住居・雇用・法律サービスについて支援したりする方針だ。

オ・ギョンムク記者

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