▲脱北者強制送還への反対を訴える人権団体/news1

 韓国政府は中国政府に対し、脱北者の強制送還中止を要請しているが、中国政府はこれを正式に拒否した。中国は国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に先日提出した回答書で「経済的な理由で中国に不法入国した北朝鮮人は難民ではない」として韓国からの勧告を拒否したという。チェコ政府も中国政府に対して脱北民の強制送還自制を勧告したが、これに対しても同じ立場を伝えた。脱北民の強制送還は今後も続けるという意味だ。

 脱北民の多くは飢えに耐えられず北朝鮮から逃れてきた。強制送還されれば激しい暴行を受け、拘禁され、ひどい場合は命を失う。彼らが受ける過酷な仕打ちは筆舌に尽くしがたい。世界で最も残酷な現場の一つと言っても過言ではないだろう。

 国連難民条約は「迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」を「難民」と定義し「難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされる恐れのある国へ強制的に追放したり、帰還させたりしてはいけない」と定めている。また拷問等禁止条約は「拷問が行われる恐れがあると信ずるに足りる実質的な根拠がある他の国へ追放し、送還しまたは引き渡してはならない」と明記している。中国はこのどちらの条約にも加盟しているが、それでも脱北者を強制送還し、今後も送還を続けると堂々と明言した。まさに野蛮な国と言わざるを得ない。

 韓国の歴代政権は「中国を刺激すれば脱北民の韓国行きに必要な協力が得られない」との考えからいわゆる「静かな外交」を行ってきた。昨年10月に中国が500-600人の脱北民を杭州アジア大会終了と同時に突然強制送還した際には国内外から強い批判を受けた。韓国政府も今年から国連人権理事会などの席で中国政府に対し「脱北民の強制送還中止」を正式に要求している。しかし中国の野蛮な行動を変えさせるのは容易ではないという事実が逆に改めて浮き彫りになった。

 韓国政府は脱北民の呼称を「難民(refugee)」ではなく「脱出者(escapee)」としているが、韓国の人権団体などはこれを問題視している。その理由は「脱北者を難民と認めない中国の論理を後押しする結果になるため」だという。中国は多くの北朝鮮難民が自国に流れ込むことを懸念しているため、中国の懸念を和らげる方策についても検討すべきだろう。いつ再び中国が脱北民を強制送還するかは予想がつかない。今こそ緻密な外交力が求められている。

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