▲カン・ドンワン東亜大学教授の新刊『Life in the Prison State(監獄国家での暮らし)』

 「銃1丁、手に入れられる?」

 古木のようにひび割れた手で韓国人教授の手をギュッと握る北朝鮮の労働者が話を続けた。

 「職場長を撃ち殺したい」

 北朝鮮の国境地域における北朝鮮住民の暮らしを伝える東亜大学カン・ドンワン教授の新刊『Life in the Prison State(監獄国家での暮らし)』に書かれているエピソードだ。

 同書は昨年11月に発売された『北朝鮮の人権、写真で叫ぶ』の英語版で、先月29日に出版された。

 これは、カン・ドンワン教授が「2019年にロシア沿海地方で会った、海外派遣された北朝鮮の建設労働者から『銃が入手できるか』と聞かれた」として紹介したエピソードだ。

 「この北朝鮮の労働者はロシアで数年間働いたが、彼が手にしたのはたった数ドルだった」と同教授は書いている。

 『Life in the Prison State』には、こうした海外派遣された北朝鮮の労働者の実態がありのままに描かれている。

 カン・ドンワン教授は、北朝鮮の新義州と国境を接する中国・遼寧省丹東市から吉林省琿春市にかけて約1400キロメートルを歩き回り、人権の死角地帯に追い込まれた北朝鮮住民の実生活をレンズに収めた。

 カン・ドンワン教授が本で告発した北朝鮮の労働者の宿舎は衝撃的だった。

 北朝鮮の労働者たちのベッドはマットレスがなく、その代わりに発泡スチロールが1枚あった。

 ロシア沿海地方は寒さが厳しいのにもかかわらず、北朝鮮の労働者たちはさまざまな資材が散らばる建設現場で、発泡スチロールを敷いてうずくまるように縮こまって眠りにつくしかなかった。

 北朝鮮の労働者たちはヘルメットとフェンスのような安全装備もまったくないまま、高層の建設現場に登って奴隷のように働かされていた。

 カン・ドンワン教授は「海外に派遣された北朝鮮の労働者たちは劣悪な環境に置かれ、最低限の人権も保証されていない」と語った。

 韓国統一部(省に相当)は先月27日に発刊された「2024年北朝鮮人権報告書」で、ロシアに派遣された北朝鮮の労働者の実態を告発した。

 脱北者たちの証言によると、海外に派遣された北朝鮮の労働者たちは休日がなく、毎日長時間勤務し、賃金の最大90%を「国家計画分」と「経費」という名目で上納させられたという。

 一日最長20時間まで働かされたロシア派遣の北朝鮮の労働者は、国家納付金と会社運営費として数百ドルを上納させられ、毎月手にする賃金は50-150ドル(約8000-2万4000円)に過ぎなかったとのことだ。

イ・テヒョン記者

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