中国の人気ソーシャルメディア「小紅書」で今月4日、「H100」と入力して検索すると、米エヌビディアの最高級人工知能(AI)アクセラレーターを販売するという書き込みを容易に見つけることができた。コメント欄には「米国でH100は1個2万ドル(約322万円)程度で買える。ぼったくりではないか」という抗議があったが、販売者は「あなた以外にも買いたい人が多くいる」とレスを付けた。

 高性能AIモデルの開発に必需のエヌビディア製AIアクセラレーターは、2年前から米政府が対中輸出を厳しく禁止している製品だ。だが、「H100」など米国で数カ月待ちのエヌビディアの最新製品が中国の「闇市場」で堂々と取引されている。シンガポール、台湾など海外に登記したペーパーカンパニーを通じ、エヌビディアのAIアクセラレーターを購入し、個人の運び屋を通じて中国国内の購入者や流通業者に流れる。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今月2日、「エヌビディアの半導体密輸に留学生まで加担している」とし、シンガポールに留学する26歳の学生がシンガポール所在のブローカーの要請を受け、エヌビディア AIアクセラレーター6個を密輸したケースを紹介した。この学生はAIアクセラレーター1個当たり100ドルの運搬費用を受け取った。罪の意識はない。この学生は「母国のために仕事をしながらお金を稼ぐことができてうれしい。やらない理由はない」と同紙に語った。

 中国現地では最新のAI半導体密輸役を「愛国的運び屋」として募集する書き込みがソーシャルメディアで散見される。 「密輸は違法だが、祖国に貢献すると考えよう」「麻薬運搬ではなく、直接製品を確認可能だ」といった記述も含まれている。一度に目立たない5キログラム程度を運び、見返りとして、最多で110万~220万円程度を受け取ることもあるという。

 こうした運び屋による「密輸」が可能なのは税関が発見したとしても対中輸出規制製品かどうか判別できないためだという指摘もある。出国時で検問を受けても半導体の知識が不足している税関職員が疑いもなく物を通関させてしまうからだ。中国政府が意図的にそうした半導体密輸に目をつぶっているという推測もある。

 そうして密輸されたエヌビディアの先端半導体は主に中国のシリコンバレーと呼ばれる広東省深圳市の電子商店街「華強北」に集結する。そこから再び中国全土にAI半導体が配送される。ただ、価格は正常な方法で購入する場合に比べ2倍以上高い。例えば、価格約1万ドルのA100は2万ドル以上、約2万5000ドルのH100は3万~4万ドルで売れる。中国IT専門メディア「36kr」は「最新製品のH100を求める人が増え、1ランク下のA100の価格は最近小幅ながら下落傾向だ」と話した。需要と供給によって価格が変動するほど闇市場が活発であることを示している。WSJは「年間中国に密輸されるAIアクセラレーターは1万2500個程度と推定される」と報じた。

シリコンバレー=オ・ロラ特派員

ホーム TOP