▲韓国外交部(省に相当)の趙兌烈(チョ・テヨル)長官と面会するためソウル鍾路区の外交部庁舎に入る中国のケイ海明駐韓大使(ケイは刑のつくりをおおざと)。ケイ大使は近く本国に帰還する。4日撮影。/news1

 中国のケイ海明駐韓大使(ケイは刑のつくりをおおざと)が任期を終えて近く韓国を去るという。ケイ大使は昨年6月「中国の敗北にベッティングする(賭ける)ことは読み違いであり、必ず後悔するだろう」と脅迫とも受け取れる発言で問題となった。これに対して韓国政府は「適切な対応」を求めたが、中国政府は韓国側の要求を無視した。そのケイ大使が定年を目前に控えて中国に呼び戻されたようだ。

 ある国が他国をどれだけ重視しているかは派遣する大使のレベルを見れば分かる。韓国は中国に駐在する大使をいわゆる「4強大使」に分類し、大統領の側近や閣僚クラスの大物を派遣してきた。これに対して中国は国交回復以来、しばらくは副局長クラスの実務担当者を韓国に派遣し、2010年からは局長級を大使に任命している。中国は米国や日本はもちろん、北朝鮮にも次官級の大使を派遣しているが、韓国には退任直前の人物を派遣するケースがほとんどだった。

 実際にこれまで韓国にやって来た中国大使の多くは中国外交部(省に相当)内で存在感が乏しい人物ばかりだった。ケイ大使について言えば中国外交部長(外相)にその名が知られているかさえ疑わしいほどだ。このレベルの中国大使が韓国では赴任と同時にVIP待遇を受けている。中でも企業経営者などは中国での事業で中国大使の支援を受けたいという愚かな期待からケイ大使を重視し、世界的な企業のトップまでがこの下級官吏との面会を求めた。国会議長、与野党の代表、副首相、長官(閣僚)、道知事など、政財界の重要人物までひっきりなしに面会を求めた。昨年6月のケイ大使のベッティング発言も野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表を自らの公邸に呼んでスピーチした際に出たものだ。韓国社会全体が中国外交部で存在感に乏しい退任直前の下級外交官を大物にしてしまったのだ。

 しかもケイ大使は最低限の節制や謙遜も見られない人物だった。前回の大統領選挙で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がTHAAD(高高度防衛ミサイル)について自らの考えを語った際、ケイ大使は「理解できない」などとする反論を文書で公表した。外国の大使が駐在国の選挙に介入したようなものだ。また韓国の立場を考慮せず中国共産党の意向しか考えない言行も相次いだ。例えば先日のバッテリー工場火災についてケイ大使は「韓国企業は手痛い教訓を得るべきだ」と発言した。人権を認めない数々の野蛮な事故がほぼ毎日のように起こる中国の共産党員がこんなことを語ったのだ。

 中国の次の大使は中国が決めることだ。ただしケイ大使のような下級官吏を韓国社会が「大物」として迎え入れることだけは今後あってはならない。たとえ下級官吏であっても大使がその国を代表する人物であるのは事実だ。しかしそれなりの待遇を受けたければ中国も韓国大使をそれに見合った形で取り扱うべきだろう。中国駐在の韓国大使は中国でほぼ透明人間のように扱われ、中国外交部の副部長(次官級)も韓国大使には会ってくれないという。韓国は中国からこんな扱いを受けるような国ではない。

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