▲共に民主党の田溶冀(チョン・ヨンギ)、張耿態(チャン・ギョンテ)、閔炯培(ミン・ヒョンベ)、金容民(キム・ヨンミン)議員(写真右から)が2日午後、ソウル市汝矣島の韓国国会議案課で非違検事厳熙竣(オム・ヒジュン)弾劾訴追案を提出しているところ。/李徳勲(イ・ドクフン)記者

 韓国の進歩(革新)系最大野党「共に民主党」が、金洪一(キム・ホンイル)放送通信委員長弾劾訴追案に続いて、李在明(イ・ジェミョン)代表の事件を担当してきた検事などに対しても弾劾訴追案を発議した。政府高官や検事などに対してこのように同時多発的に弾劾を推進した例はなかった。放送通信委員会(放通委)をまひさせ、李代表の捜査を妨害しようとする狙いがあるとみられる。民主党の度を越した弾劾攻勢に、韓国の国政は揺らぎ、法的な捜査に支障まで来すことになった。

 金洪一委員長は2日、民主党の弾劾攻勢に押されてついに辞職した。前任者の李東官(イ・ドングァン)委員長に続いて2人目だ。憲法裁判所の弾劾審判の結果が出るまで数カ月間にわたり放通委の業務がまひすることを防ぐため、これといった違法もない人物が、就任からわずか6カ月ほどで退かなければならなかった。

 民主党の放通委員長弾劾攻勢は、これまで民主党寄りの放送を行ってきたMBC放送を自分たちの側に引き留めておくためのものだ。放通委が、8-9月に任期の満了するMBC・KBSなど公営放送関連の取締役陣の選任計画を議決すると、民主党はこれを妨げるために金委員長を告発し、弾劾訴追案を発議したのだ。法律上は弾劾の対象ではない副委員長も共に告発することで、弾劾できると主張した。

 民主党は昨年末にも、同じ理由で李東官・前委員長を弾劾しようとした。李・前委員長は就任から100日もたたずして、具体的な違法もないのに辞職しなければならなかった。これにより放送再許可業務がまひし、MBC・KBSなど34の放送局が1カ月間無免許状態で放送するという事態になった。民主党は、国会の役目である放通委員(3人)推薦・票決も拒否し、「委員長・副委員長2人運営体制」を招いた。すると「2人体制」は違法だと主張した。放通委が公営放送の取締役陣を変えられないように「植物委員会」にしてしまおうとしたのだ。

 後任の放通委員長は、大統領が指名したら国会人事聴聞会を経て7月末か8月初めに就任することになると思われる。だがMBC社長交代を阻止するため総力戦を展開している民主党は、新委員長に対しても、どんな理由を付けてでも弾劾を推進する可能性が高い。こうなれば、1年にもならない期間で放通委員長3人に対し弾劾を推進することになる。到底、正常とは言えない。

 民主党は既に、公営放送の取締役陣を自分たちの意のままに任命し、社長の交代もできないようにする放送3法を国会常任委で一方的に処理した。自分たちが政権を取ったときは、この法案の内容とは全く逆に、公営放送の社長らを暴力的な方法で追い出した。ところが再び野党になるや「言論改革」だとして押し付けている。

 民主党は、李代表の捜査検事3人など検事4人に対する弾劾訴追案も党論として発議した。朴庠勇(パク・サンヨン)検事はサンバンウル対北送金事件、姜白信(カン・ベクシン)・厳熙竣(オム・ヒジュン)検事は大庄洞・ペクヒョン洞事件を捜査した人物だ。民主党は先月、検察が違法対北送金事件で李・前代表を追加起訴すると、直ちに検事弾劾を推進した。李・前代表の捜査を妨害し、裁判に影響を及ぼすためのものだと言うほかない。

 民主党は、これらの検事が13年前に韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相の違法政治資金授受事件の裁判時に在監者を呼んで違法な陳述を強要し、金万培(キム・マンベ)氏と申鶴林(シン・ハクリム)氏の大統領選挙介入世論操作事件で違法に捜索・押収を行った-と主張した。だが韓・元首相は懲役2年の確定判決を受け、金万培・申鶴林両氏は最近身柄を拘束された。無理な弾劾だということを民主党自身分かっているだろう。

 民主党は尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足後、11回も弾劾案を発議した。弾劾訴追前に辞任した放通委員長まで合わせると13回だ。このうち、自主撤回した2件を含め9件が検事を狙ったものだ。アン・ドンワン検事弾劾案は憲裁で棄却され、孫準晟(ソン・ジュンソン)・李禎燮(イ・ジョンソプ)検事弾劾案は憲裁で係争中だ。民主党は、検事弾劾案が憲裁で棄却されても損はしないという計算なのだろう。憲裁の審判中は当該検事の業務が停止し、追加捜査や裁判に支障が生じることは避けられない。

 その上、民主党は、当該検事を国会法制司法委に呼んで違法行為を調査すると言っている。法制司法委の証言台に立たせて被疑者のように追及し、侮辱するつもりなのだ。それでも足りぬと、対北送金事件を捜査した検察を捜査する特別検察官を推進している。被疑者が捜査官を捕まえようというのだ。民主党指導部は「判事選出制」にまで言及している。検事弾劾に続いて司法府にまで圧力を加えているのだ。

 これら全ては、結局のところ李在明・前代表の大統領選出馬のためのものだ。徹底して政略的だということを意味する。国家紊乱(びんらん)とは、憲法の基本秩序を乱す行為を指す。今の民主党の行いは、国家紊乱と呼んでも過言とは言えない。

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