▲イラスト=李撤元(イ・チョルウォン)

 ローマ帝国が東西に分かれた際に宗教も少し変容した。元々東ローマ帝国で信仰されていたのは正教会だが、この正教会がロシアに伝わったのはキエフ公国のウラジーミル1世の時だった。東ローマ帝国の皇帝が反乱を鎮圧する軍隊の派遣をウラジーミル1世に要請したところ、ウラジーミル1世は東ローマ帝国の皇族女性との結婚を条件とした。すると東ローマ皇帝の娘アンナが「正教会を受け入れれば結婚に応じる」と伝えてきたため、宗教の求心点を求めていたウラジーミルはこれを受け入れた。その後東ローマ帝国が15世紀にオスマン帝国の侵略により滅亡すると、ロシアは正教会の主導権を握った。今も全世界3億人の正教会信者のうちロシア正教会の信者は1億人といわれる。

 ロシア正教会とウクライナ正教会は長い間一つの家族のようなものだった。ところがロシアによる差別で双方は分裂した。まずスターリンによる食糧の収奪があり、その後ロシアによる2011年のクリミア半島併合などで関係がさらに悪化した。プーチン大統領に熱烈に追従するモスクワの大主教は侵略戦争を「聖戦」と呼び、ウクライナに侵攻する戦車に聖水をかけたため、これにウクライナ正教会は強く反発した。他国の正教会もウクライナ正教会の独立を認めた。

 ロシア人の信仰心は深い。宗教をアヘンだとか麻薬などとレッテル貼りしたソ連共産党でさえ正教会をなくすことはできなかった。これには政治権力に追従してきたロシア正教会の歴史も影響している。正教会は世俗化した西欧の教会とは違い民衆を精神的に支配していたため、強大な権力を求めていた18世紀のピョートル大帝はモスクワ総主教庁を廃し、皇帝権力のコントロールの下に置かれた聖務会院を設置して教会を掌握した。ピョートル大帝をロールモデルとし終身大統領の道を開いたプーチン大統領もロシア正教会の影響力を統治に利用している。プーチン大統領は自らを篤実な信者だと言い、宗教行事にも熱心に参加している。

 世界で宗教を最も敵対視している国は北朝鮮だろう。北朝鮮では聖書を目にするだけで生き延びることさえ難しい。脱北者が強制送還されると通常は労働教化刑だが、中国で牧師に会っていた事実が分かると、政治犯収容所行きか処刑になる。ところがその北朝鮮でも平壌に聖堂、寺、教会がある。外国に見せるための演劇舞台だ。

 先週北朝鮮を訪問したプーチン大統領は故・金正日(キム・ジョンイル)総書記が建てた平壌正教会の聖堂を訪れ、宗教画をプレゼントした。他国を侵略し、数多くの女性や子供を殺害した独裁者が宗教の存在しない国の偽物の聖堂に行くのは奇怪な現象だ。これをきっかけにロシア正教会が韓国と北朝鮮を同時に管理する教区長を5年前に任命していた事実も明らかになった。その教区長が北朝鮮政権に対して最低限の「宗教の自由」を要求したか気になるところだ。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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