▲リチウム電池メーカー「アリセル」(京畿道華城市)の工場火災の様子が写った内部防犯カメラの画像。韓国消防庁中央緊急救助統制団が25日に公開した。写真=消防庁中央緊急救助統制団

 23人が死亡したリチウムバッテリー工場の火災は、電気や油類などで発生する火災とは全く違う様相を呈し、衝撃を与えた。特に携帯電話、ノートパソコン、タブレットなど各種電子ポータブル機器の使用が広がるにつれてバッテリー使用は日常化しており、その生産はますます増加しているのにもかかわらず、安全管理システムは不十分だったということが露呈した。バッテリー火災時に消火するマニュアルもなく、バッテリー数万個が密集した状態で保管されている施設でありながら特別な管理基準がなかった。

 乾電池・携帯電話から電気自動車・軍用装備までさまざまな所に使われているバッテリーの主な原料はリチウム、ニッケル、マンガン、炭素などがだが、それぞれ使用する材料が少しずつ違う。材料によって火災の様相や排出する毒性の物質にも差がある。高温・高圧などの原因により短時間で爆発して火災につながる「熱暴走」時はバッテリーの内部物質がそれぞれ異なる化学反応をする。この違いのために消火作業時に水が使えるのか、それとも砂を使うべきなのかなど、消火方式の差が大きい。普段からバッテリーの特性ごとの火災マニュアルを備えていなければ初期対応は遅れざるを得ない。

 バッテリー火災関連で以前から指摘されてきた対策作りも後回しになっていた、との指摘もある。韓国監査院は2020年に国内における金属火災に関連規定の不在を指摘した際、「海外のように金属火災を分類し、別途の消火器規定を設けるべきだ」と言ったが、まだ反映されていない。

 バッテリー工場の施設管理も死角地帯に置き去りにされ、不十分なままだ。火災が起きたリチウム電池メーカー「アリセル」(京畿道華城市)はバッテリー3万5000個が密集した状態で保管され、連鎖爆発の危険が大きかったが、関連法により「2級消防安全管理施設物」に分類されており、一度自主点検をして消防署に申告さえすればいい状況だった。スプリンクラー設置も義務対象ではなく、金属火災の消火に有効な乾いた砂を備え付けなければならない根拠もなかったため、現場にあったのは粉末消火器だけだった。

 専門家らは「長期的に見れば、バッテリーメーカーが『火災の危険性』に関して現在よりさらに多くのバッテリー情報を消防当局に公開し、消防当局もバッテリーのタイプ別対応マニュアルを作成しなければならない」と指摘する。バッテリーの特性によって、初期にどのような物質が出るのかを知らなければ、消火方法や装備を適切に決定できないからだ。全米防火協会(NFPA)は「エネルギー貯蔵システム(ESS)などバッテリー設備を納品する際は熱暴走関連の危険情報を提供しなければならない」と明記している。漢陽大学の宣良国(ソン・ヤングク)教授は「これまでバッテリー機能と産業だけに集中してきたが、安全に対してさらに関心を注がなければならない時期になった。バッテリーの特性によるマニュアルを作成し、特に災害への対応が脆弱(ぜいじゃく)な中小企業に対してガイドラインを提示する必要がある。消防当局もバッテリー火災の特性をもっと学ばなければならない」と語った。

イ・ジョング記者

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