韓国で覚醒剤を使用したとして、昨年4月から今年2月まで刑務所に収監されたキム・グヨン元受刑者(仮名・37)は「収監から1カ月ほど経つと、同じ部屋にいた兄貴から部屋で白い粉を見せられ驚いた」と話した。覚醒剤とみられる物質が刑務所の居室にまで入ってきていた。「兄貴」は「望みがあれば何でも言ってくれ」「カネで何でもできる」と言い放った。一緒に収容されていた麻薬犯らは「出所したら皆で麻薬パーティーを楽しもう」と口癖のように繰り返していたという。キム元受刑者は服役中も麻薬の誘惑にいつも動揺したという。「大麻をやっていた人物がアイス(覚醒剤)を覚え、麻薬の入手先を1カ所しか知らなかった人が10カ所を開拓するところが刑務所だ」と話した。

 最近刑務所や拘置所に麻薬を密かに持ち込み、矯正当局に摘発されるケースが相次いでいることが19日までに分かった。今年3月、金泉少年刑務所では収容者宛ての手紙に隠し、麻薬類の鎮痛剤が持ち込まれたのが摘発された。水原拘置所は4月中旬、新規収容者の所持品検査で覚醒剤と推定される白い粉と注射器1個を発見した。5月末には蔚山拘置所でも同様の事件が発生した。新入りの収容者の所持品検査で麻薬と推定される白い粉が見つかり、最近大邱科学捜査研究所に成分分析を依頼した。

 韓国法務部の矯正当局は対応に追われた。昨年11月に「取り締まり強化」の方針を表明したにもかかわらず、刑務所内で麻薬が相次いで発見されているからだ。光州刑務所は昨年10月、収容者に届いた書留郵便物の検査過程で、郵便物の中に隠したフェンタニル約3グラムを発見し、共犯ら11人を摘発した。ソウル拘置所は昨年8月、収容者の麻薬売買あっせん行為を摘発。同年9月、仁川拘置所では新入りの収容者の所持品から麻薬のメタンフェタミン3.63グラムを発見した。矯正施設内に備えられている麻薬類の向精神薬が盗まれる事件も起きている。C受刑者(37)は昨年4月、ソウル拘置所職員の机上にあった「ゾルピラム10ミリグラム」3錠など向精神薬約20錠を受刑者服のポケットに入れ、盗んだ疑いで懲役1年を言い渡された。

 矯正当局と警察は、どんなルートで麻薬が入ってくるのか正確に把握しようといる。警察は収監中の麻薬事犯が面会や手紙で暗号や隠語を使い、外部の麻薬組織に供給を求め、麻薬事犯や一般の犯罪前科者による「ダークネットワーク」を通じ、運び屋役を雇う形態を疑っている。矯正当局の麻薬特別管理対象は麻薬事犯に限定されており、非麻薬事犯の監視は比較的緩い。そんな弱点を利用し、依頼者と同じ矯正施設に収監された非麻薬事犯を取り込み、非麻薬事犯宛ての手紙や小包で麻薬を送る手口だ。

 運び屋役が月1000万ウォン(約114万円)以上の見返りを受け取っていることも分かった。警察関係者は「運び屋役は検挙されても『自分も小包や手紙になぜ麻薬があるのか分からない』と言い逃れる」と話した。「ダークネットワーク」を通じ取り込まれた「運び屋役」が逮捕前に外国ドラマのように麻薬を包んだビニールを飲み込んだり体内に挿入したりする奇想天外な方式で麻薬を持ち込む可能性が疑われている。

 専門家は現在の措置だけでは麻薬持ち込みの試みを完全に防ぐことは難しいと指摘する。現行法には「麻薬事犯の場合、他の収容者との接触を遮断できる」との規定がある。拘置所と刑務所はそれを根拠に麻薬事犯を他の収容者と分離して管理するのが一般的だ。そのため、初犯、再犯、流通元、製造元が同じ部屋で過ごすことが多い。その過程で麻薬事犯同士のネットワークが強化され、麻薬の持ち込みが続く。昨年麻薬事犯の再服役率は31.9%だった。受刑者全体の再服役率(22.5%)を上回る。麻薬事犯の間では「麻薬で刑務所に入ったらここが『ヒロポンパラダイス』だった」「刑務所ではなく麻薬士官学校だった」といった言葉が飛び出す。

 矯正施設内の麻薬犯罪防止のスタンスを「監視」から「リハビリ」に変えるべきだとの指摘も出ている。朝鮮大政策大学院中毒リハビリ福祉学科のユ・スクキョン教授は「麻薬事犯は『出所日がすなわち麻薬をやる日』というほど中毒化した人々なので、監視と処罰だけでは限界がある」とし、「矯正施設内のリハビリ治療プログラムを活性化し、出所後のリハビリまで国が面倒を見るべきだ」と述べた。法務部は「矯正施設内の麻薬リハビリプログラムを強化する」と説明した。

朱亨植(チュ・ヒョンシク)記者

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