▲私たちは同じクラスの友人-6月5日、慶尚北道金泉市甑山面甑山小学校1年のキム・ジファン君が平均79歳の生徒たちと一緒に授業を受けている。同校は全校児童22人のうち15人が満65歳以上の高齢者だ。/金泉=キム・ドンファン記者

全校児童22人のうち15人が高齢者、慶北金泉市甑山小学校に行ってみた

 慶尚北道金泉市甑山面。山奥にある人口960人の小さな町だ。6月5日、同地域に唯一残された学校である甑山小学校を訪れた。午前8時50分、21人乗りの黄色いスクールバスのドアが開くと、ランドセルを背負った10人のおじいさん、おばあさんたちが順に降りてきた。「生徒の皆さん、血圧から測りましょう」担任のチョン・ヨンウさん(37)の声に、生徒たちは椅子に座って順番に測定器で血圧を測り始めた。

 甑山小学校は子どもの小学生よりも高齢者の小学生の方が多い学校だ。全校児童22人のうち15人が満65歳以上だ。おじいさんが1人、おばあさんが14人だ。彼らの平均年齢は79歳で、最も若い人で65歳だ。

 「高齢者が通う小学校」というのは聞き慣れない言葉だが、人口流出に頭を抱える慶尚北道では、蔚珍郡の温井小学校に次いで2番目だ。

 町内の高齢者たちが小学校に通うようになったのは、今年から学校が廃校の危機にさらされるようになったためだ。1980年代、約600人だった甑山小学校の生徒数は、今年7人にまで減ってしまった。農業を営んでいた若者たちが皆、都市へと出て行ってしまったためだ。

 慶尚北道では、生徒数が15人以下に減ると、分校や廃校の対象となる。1928年に開校し、96年の伝統を誇る小学校が廃校の危機にさらされたのだ。甑山小学校が廃校になってしまうと、これまで通っていた生徒たちは峠を越えて10キロ以上も離れた他の小学校に通わなければならない。スクールバスで30分以上はかかる。

 これを巡り、村の里長や教師たちが学校再生に向け乗り出した。甑山面里長協議会のキム・チャングク会長は「学校までなくなってしまうと、そうでなくても小さくなってしまった村がいよいよ消えてしまうかもしれないという危機感があった」と話す。こうして「高齢者の生徒でも受け入れよう」というアイデアが出された。時を同じくして慶北道教育庁は2022年、高齢者も校長が許可すれば小学校に通うことができるようにする規定を新設した。

 甑山面の11カ村の里長たちが敬老堂(高齢者のための小規模コミュニティー)を訪ねて回りながら「小学校の卒業証書が欲しい人はいませんか」と声を掛けた。こうした努力の結果、約50人の高齢者が志願し、面接を経て15人が選ばれた。

 5月27日に行われた入学式には、平均年齢79歳の高齢者の新入生とこれら高齢者の子どもなど約100人が参加した。新入生のカン・スンドクさん(86)の娘は教室の壁に「頭のいいうちのお母さん、もっと賢くなりますね」と書いたメモを貼った。子どもや生徒の親たちも、高齢者新入生の入学を歓迎した。保護者のチョ・ヨンウさんは「おじいさん、おばあさんたちのおかげで子どもたちの学校が廃校にならずに済んだ」とし「子どもたちも大人に対する接し方を学ぶことができて、とてもいい機会だと思う」と笑みを浮かべた。

 おじいさん、おばあさんには学業に対する一生分の恨みを晴らすきっかけとなった。妻と一緒に入学した学級委員長のイ・ダルホさん(80)は「これまで感謝牌(はい)、功労牌はたくさんもらったが、学校の卒業証書がなかったことが一番の恨みだった」とし「学べるということがとてもうれしい」と笑った。最高齢のオム・スンヨンさん(89)は「文章を学ぶことで、孫たちにメールも送りたい」と希望を語った。

 高齢者の生徒たちが入学したことで、至る所から寄付金が寄せられた。イ・ダルホさんの5人の子どもは100万ウォン(約11万5000円)ずつ500万ウォン(約57万5000円)を寄付した。甑山面の里長11人も10万ウォン(約1万1500円)ずつ110万ウォン(約12万6500円)を集めた。故郷を離れた甑山小学校の卒業生たちも、十匙(し)一飯(皆の力を合わせれば、人を助けることができる)の心で寄付金を集めた。こうして集められた寄付金は4000万ウォン(約460万円)にもなった。学校側は「古い机や椅子を変え、学用品と教材を買うのに使う予定」という。

 同日1時間目の授業は「顕忠日(国のために犠牲になった愛国者を追悼する行事)の意味を心に刻もう」だった。お絵描き、折り紙などの活動はおじいさん、おばあさんと子どもたちが同じ教室で行う。イ・ダルホさんが手を挙げて朝鮮戦争に参戦して戦死した父親の生々しい話を聞かせてくれた。「6·25戦争(朝鮮戦争)の時、うちの町が…」

 続いておじいさん、おばあさんたちは孫と同じ年代の同級生たちとムクゲを描いた。おばあさんたちがきれいなムクゲを素早く描くと、子どもたちが「うちのおばあさん、最高!」と言って手をたたいた。パク・トヨン君(7)は踊りながら愛嬌(あいきょう)を振りまいた。

 2時間目は授業の進度が異なり、小学1年のおじいさん、おばあさんはハングルの母音を、1、2年生の子どもたちはハングルの単語をそれぞれ練習する授業を行った。おじいさん、おばあさんたちは練習帳に字を数十回ずつ書き込み、声を出して読んだ。

 「声を出して読むと、早く覚えられますよ」

 生徒たちを教えていたチョン・ヨンウ教諭は「年配の方々は時々とんでもない質問をされることもあるが、集中力がすごい」とし「実力がぐんぐん伸びるので、教えがいがある」と話した。

金泉=イ・スンギュ記者

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