7090人。これは先月の第4週に韓国全土の大型病院救急室に搬送された軽症患者の数だ。2月の第1週は8285人で、翌月には6000人台前半に減ったが、その後は上昇傾向が続いており、研修医の集団離脱による救急医療の空白をさらに厳しいものとしている。

 軽症患者とは例えば単なる歯痛、腹痛、じんましん、風邪など比較的軽い症状を訴える患者のことを言う。これらの患者には気の毒だが、軽症患者が救急車で搬送されるケースが増えるほど、1分1秒が生命に直結する重症患者の治療条件はどうしても悪化する。ひどい場合は数時間にわたり救急病院のたらい回しが起こり、また現場を守る医療スタッフの業務面での負担も重くなる。全羅南道など一部の地域では最近救急車が現場に到着するまでの平均時間が10分を上回ったという。心肺停止など急を要する患者の治療に必要なゴールデンタイムは通常10分とされている。

 119番通報の乱用による救急医療の空白は韓国だけの問題ではない。日本では昨年、全国の救急車出動件数が760万人に達し、2年連続で最多を記録した。「家にゴキブリが出た」「エアコンが故障した」など軽症どころかいたずらとも言える通報も相次いでいるという。三重県松阪市では2022年に救急搬送された患者10人のうち6人が軽症だった。事態を重く見た松阪市は病院や消防署などと協議し、今月から緊急性のない通報者には7700円の「罰金」を徴収することを決めた。このままでは「救急車はタクシー、救急病院は24時間営業のコンビニになる」という医療関係者の指摘を受け、非難を承知で今回の対応に踏み切ったという。

 韓国でも研修医の集団離脱問題が今も完全に解決しておらず、大型病院の集団休診は今も続いているため、119番通報の乱用で今後どれだけ多くの救急患者が被害を受けるか想像もできない。しかも韓国では病院の救急室利用にかかる費用は事実上ゼロに近い。救急医療の管理料として5万ウォン(約5700円)ほど徴収されているが、これは民間保険の対象となっているためほとんどが後から払い戻される。

 消防関係者や医療関係者からは日本の松阪市のように軽症患者から現金を徴収するか、あるいは救急搬送が本当に必要か判断する「1339救急医療情報センター」の復活を求める声が出ている。過去には1339に電話をかければ医療スタッフが症状を確認し、自宅での安静でよいか病院治療が必要か判断してくれていた。しかしこれは「119番通報と混同される」との理由で12年前に廃止となった。その結果、救急病院に軽症患者が押し寄せないようにする仕組みが現在韓国には存在しない状態になっている。

 日本のような「119有料化」には韓国国民の多くが反発するだろう。しかし重症患者が危険にさらされる問題をこれ以上放置できないのも現実だ。病気に対しては誰もが同じ立場だ。今や誰もが救急医療空白の被害者になる可能性があるのだ。

金東炫(キム・ドンヒョン)記者

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