社説
0-4歳人口が北朝鮮より少ない韓国、国家非常事態だ【6月18日付社説】
韓国政府が19日、「少子化傾向反転のための対策」を発表し、「2030年までに合計特殊出生率を『1』台に回復する」という目標を掲げた。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は同日、少子高齢社会委員会の会議で「人口国家非常事態」を公式に宣言し、「少子化問題を克服するその日まで、汎国家的総力対応体系を稼動させる」と述べた。そして、古代都市国家のスパルタが人口減少のために急激に滅亡への道をたどった例も挙げた。同委員会の周亨煥(チュ・ヒョンファン)副委員長は「(日本による植民地支配からの)解放(1945年)以降、初めて0-4歳の人口が北朝鮮より少なくなった」と述べた。2021年基準の0-4歳の人口は韓国が165万人、北朝鮮は170万人だとのことだ。
今、韓国における少子化の状況は「国家非常事態」という言葉でも足りない。韓国の昨年の合計特殊出生率は0.72で、前年の0.78をさらに下回った。2021年基準で経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国のうち、合計特殊出生率が1.0に満たない国は韓国が唯一だ。このまま行けば、今年は合計特殊出生率が0.6台という空前絶後の数字になる可能性が高い。こうした状況で、人口減少を防ぐためにあらゆる手段を動員しなければならないことに反対する国民はいないだろう。
同日の発表には韓国政府の危機感がにじみ出ている。少子化問題担当部処(省庁)の名称を「人口戦略企画部(省に相当)」に定め、長官が社会副首相を務め、少子化・高齢社会・移民政策まで含む人口に関する中長期の国家発展戦略を立てることにした。また、現在6.8%の男性育児休業取得率を尹大統領の任期内に50%水準に向上させ、育児休業中の給与も月150万ウォン(約17万円)から最大で250万ウォンにまで引き上げることにした。住宅政策としては新生児優先供給などを新設し、出産世帯対象の住宅供給を7万戸から12万戸に増やすという計画を打ち出した。扶養する子どもがいる場合の税額控除も子どもあたり10万ウォンずつ追加拡大することにした。
韓国政府が打ち出すことができる少子化克服対策はほぼすべて出尽くしているという。しかし、破格の対策内容が見当たらず、この程度の対策で若い世代の気持ちを変えることができるのか、疑問に思うのも事実だ。また、今回の対策で婚外子に対する政策が抜けているのも残念な点だ。韓国で生まれた婚外子は2.5%に過ぎないが、OECD平均の婚外子の割合は42%にも達する。既に少子化傾向は数十年続いており、少子化社会に適応する案を出すことも重要だが、対策は見えてこない。野党・共に民主党もこの問題についてだけは積極的に協力しなければならない。