▲イラスト=李撤元(イ・チョルウォン)

 韓国全土の小中高校で実際に通報があった教権(教諭としての権威・権力)侵害のうち、児童生徒による教諭へのセクハラが2018年の187件から22年には331件へと77%も増加したことが分かった。教諭の権威が失墜し、児童生徒が教諭を軽視するため特にセクハラが増えているようだ。とりわけ身体面での早熟化傾向から問題のある児童生徒の年齢も徐々に低下しており、それに伴いセクハラの内容も悪質化している。この点も非常に深刻と言えよう。

 教権侵害の事例を見ると、教育現場でこんなことが起こっているとは信じがたい内容ばかりだ。大邱市内のある中学校では生徒が授業中に教諭に対し「○○先生と寝ましたよね?」「あー、後ろ姿を見ると××したくなる」など、教諭に対する露骨なセクハラ発言が複数回、しかも日常的に行われているという。忠清南道のある小学校では理科の実験中に児童が性的な行動を取り、これを教諭がやめさせようとすると「○○女が○○するのか」などと言われたという。ソウル市内のある中学校生徒はSNS(交流サイト)に「先生の○○を触りたい」など担任教諭へのセクハラとなる書き込みを複数回掲載した。学校では児童生徒の問題行動に対し「子供だから教え諭して見過ごすべきだ」という雰囲気が今も根強いため、実際に通報されたセクハラ被害は氷山の一角と言えよう。

 「もはや教諭の忍耐あるいは指導だけで解決できるレベルではない」との声も教育現場では相次いでいる。問題がさらに深刻化する前に対応の方針を定め、しっかりと対策に取り組む必要があるだろう。度が過ぎた児童生徒に対してはより積極的に治療やカウンセリングを受けさせる制度面での仕組みを整えねばならない。また問題行動を繰り返すとか、犯罪に準ずるような行動を取った児童生徒に対しては「学校長からの通告制度」を活用できる。学校長が家庭裁判所に対し、問題のある児童生徒の保護処分を申請できるという制度だが、これには心理面での負担や父兄からの抗議が懸念されるため、実際の活用には非常にハードルが高いのが実情だ。

 教諭が児童生徒を指導したことを理由に、本人あるいは父兄から児童福祉法上の「情緒的虐待」として訴えられるケースも今なお多い。情緒的虐待行為の概念が非常に曖昧であるため、これをより具体化し、「児童虐待」などと軽々しく通報できないようにしなければならない。一方で被害を受けた教諭らはまずは教権保護委員会に訴えるしか手立てはないが、この教権保護委員会も専門性が欠如しており、教諭らが逆に2次被害を受けるケースが多いとの指摘も相次いでいる。

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