▲イラスト=UTOIMAGE

 休戦ライン付近で北朝鮮が新たに壁の建設を開始し、韓国軍が状況を詳しく把握中であることが14日までに分かった。韓国国防部(省に相当)のある幹部は同日「北朝鮮軍は最近、東部・西部・中部の各戦線の軍事境界線から北に1キロほど離れたラインに沿って兵力と装備を投入し壁を建設している。その作業の様子を韓国側の監視機器で捕捉した」と明らかにした。軍事境界線と北朝鮮軍最前線部隊の鉄柵の間に壁を建設中とみられる。昨年末の朝鮮労働党全員会議の際、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は南北関係について「同族関係ではなく敵対的二国間関係」として「反統一政策」の方針を明確にしたが、その後物理的にも壁を建設し、南北間の「国境線」設置に乗り出したと考えられる。

 韓国軍合同参謀本部は同日、北朝鮮による壁建設の動きについて「(韓国)軍は北朝鮮軍の活動を綿密に追跡・監視しており、確固たる軍事的な備えを維持しながら国連軍司令部とも緊密に協力を続けている」とする一方「北朝鮮軍の活動については追加の分析が必要で、これに対する韓国軍の対応は作戦中の兵士らの安全確保のため説明は制限されている」とコメントした。韓国軍は北朝鮮による壁設置の動きを詳しく監視しながら、その意図などについても分析を行っているという。

 今月9日には十数人の北朝鮮軍兵士が中部戦線の非武装地帯(DMZ)で作業中、軍事境界線を50メートルほど韓国側に侵犯したが、これも壁建設と関連があったとみられる。当時北朝鮮軍はシャベルやつるはしなどの作業道具を手にしており、韓国軍の警告放送や警告射撃により直ちに北側に戻った。北朝鮮は壁と北朝鮮内部をつなぐ戦術道路も同時に建設しているようだ。北朝鮮は今年4月から軍事境界線の北側で地雷の埋設作業も行ってきた。

 金正恩総書記は今年に入って南北関係を「敵対的二国間関係」とし、南北の断絶を予告してきた。金正恩総書記は今年1月、最高人民会議の施政方針演説で「共和国民族史から『統一』『和解』『同族』という概念そのものを完全に除去すべきだ」「境界地域における北南連携の全ての条件を徹底して分離するため、段階ごとの措置を厳格に実施しなければならない」などの考えを示した。北朝鮮が軍事境界線の鉄柵に加え、今回壁まで建設を始めたことは、これら一連の「反統一指針」を単なる宣言ではなく、物理的にも進めていく意向を示したものと考えられる。

 金正恩総書記は今年に入って北朝鮮憲法に明記された「北半部」「自主」「平和統一」「民族大団結」などの用語を削除する憲法改正の必要性を訴えてきた。その後も北朝鮮は平壌に設置されていた祖国統一三大憲章記念塔を撤去し、韓半島全体を意味する「三千里」という言葉も削除した。さらに統一戦線部の名称を「労働党中央委員会10局」に変更するなど、統一を目指す意味を含む組織名称も改編した。北朝鮮は子どもの名前も「統一(トンイル)」「韓国(ハングク)」「ハナ(一つ)」などとしないよう指示し、海外公館に置いていた統一関連の書籍も廃棄した。

 憲法から「平和統一」「民族大団結」などの言葉を削除するため、北朝鮮では今月末にも最高人民会議を招集し、憲法改正を進めるのでは、との見方も浮上している。北朝鮮は今月下旬にも朝鮮労働党中央委員会全員会議の開催を予告しているが、この場で「敵対的二国間関係」の設定に向けた議論を行った上で、憲法改正に着手する可能性が高い。韓国統一部(省に相当)は「最高人民会議後に外務省を通じて対南措置を発表するか、あるいは京義線断絶を一層明確に示す行動に出るかもしれない」と予想している。また北朝鮮が主張してきた「海上境界線」の一方的な宣布、あるいは「戦術的な挑発」を行う可能性も考えられると専門家は警告している。

 ドイツのベルリンの壁が崩壊してから35年、南北を分ける248キロの軍事境界線に新たに壁が建設されれば、中国・ロシアと米国との対立による新冷戦の到来を象徴する「第2のベルリンの壁」となりそうだ。北朝鮮による休戦ライン付近での壁建設について専門家からは「脱北経路の封鎖に加え、物理的な壁の視覚的効果を最大限に生かし、国内外にメッセージを発信する意図があるのでは」との見方も出ている。さらに「金正恩総書記が壁を建設して国境を管理し、北朝鮮国内の支配力を強化する必要が出てきたほど、北朝鮮国内の動揺は根強いのでは」との見方もある。ある軍事専門家は「今年11月の米国大統領選挙を前に、北朝鮮は壁を建設することで米国との交渉力を高めるねらいがあるとも考えられる」と指摘した。

ヤン・ジホ記者

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