▲DJ「NewJeansNim」として活動しているお笑いタレントのユン・ソンホさん。/news 1

 僧侶(韓国語でスニム)に扮し、クラブでDJのパフォーマンスを行う「ニュジンスニム(NewJeansNim)」として活動するお笑いタレントのユン・ソンホさん(47)が、東南アジアでパフォーマンスの中止を余儀なくされている。クラブでのパフォーマンスが「世俗人が僧侶の服装で活動し、仏教の教えを汚している」として現地の仏教界から反発を受けているからだ。すると今度は韓国の仏教界でも、ユンさんの僧侶服着用を巡って「仏教は時代に合わせてどう変わるべきか」という「制服論争」が活発になってきた。「国際的に話題を集めたニュジンスニムが、1600年の韓国仏教史に残る論争の中心に立った」とも言われている。

 ユンさんが先月、僧侶に扮してマレーシア・クアラルンプールのナイトクラブでDJのパフォーマンスを行ったところ、現地の仏教界や政界から反発の声が上がった。マレーシアの元運輸相は「ニュジンスニムのパフォーマンスがマレーシアの仏教界を怒らせ、仏教の価値と教えに対する誤った認識を植え付けた」として、ユンさんの入国禁止を要求した。その後に予定されていたユンさんのパフォーマンスは全て中止となった。

 シンガポールでもユンさんのパフォーマンスが予定されていたが、現職の内務相が「シンガポールの仏教界に対する侮辱であり、受け入れられない」と公式にコメントし、波紋が拡大した。シンガポール仏教徒連盟もパフォーマンスの中止を求め、現地警察も「宗教的な内容が含まれれば対応に乗り出す」との方針を示した。シンガポールのナイトクラブ側は「宗教的要素を排除してほしい」とユンさんに求めたが、ユンさんは「それは受け入れられない」としたため、パフォーマンスは中止となった。

 韓国の仏教界でも「制服論争」が巻き起こった。チョンヒョン僧侶(奉寧寺金剛律学僧伽大学院・助教授)は先月、仏教界メディア「法宝新聞」に「僧侶服は誰でも着られる服なのか」と題するコラムを寄稿した。チョンヒョン僧侶は「長衫(僧侶の上衣)と僧侶服は出家者の身分を表す特別な衣服」だとして「実際に軍人以外の人が軍服を着たり、警察官以外の人が警察の制服を着たりするのは違法」と主張した。

 これに対し、東国大学白象院(修行館)の学監(学務や学生を監督する役)を務めるイルユン僧侶は「僧侶服は誰でも着られる服だ!」と反発するコラムを寄稿。イルユン僧侶は、ドラマ『ナルコの神』(原題:『スリナム』)で、俳優ファン・ジョンミンがカルト宗教の牧師を演じたことに言及し「大衆には虚構の人物と現実の聖職者を区別できる目がある」と述べた。さらに「ニュジンスニムの僧侶服着用が問題になるのなら、今後は大衆文化界が仏教を扱うことに消極的になり、長い目で見てもプラスにならない」と主張した。

 その後も二人は「僧侶服の重さは本物だ。僧伽(仏道修行をする僧の集団)独自の服装は大雑把に扱ってはならない」(チョンヒョン僧侶)、「僧侶服の重さとは何のことか? 仏教が直面している危機は大衆の無関心であり、大衆と呼吸を合わせなければ淘汰される」(イルユン僧侶)などとやり合った。

 韓国リサーチの「宗教認識調査」(昨年12月)によると、韓国人の51%は無宗教者だった。信仰している宗教がないと答えた人は20代が69%、30代は62%だった。韓国仏教の最大宗派「曹溪宗」の出家者も、2000年には528人だったが22年には61人まで急減した。仏教界ではニュジンスニム論争について「教団自体が存続できるかどうか懸念される状況だったが、日照りに恵みの雨が降ったような感じだ」という反応も出ている。

 仏教は372年(高句麗・小獣林王2年)に朝鮮半島に伝来して1600年にわたり続いてきたが、専門家らはそのような仏教の「余裕と懐の深さ」を示していると評価した。西江大K宗教学術拡散研究所のキム・ドンギュ研究教授は「時代に合わせて宗教がどのように変化すべきなのかを示す論争」だと指摘した。仏教は韓国の「主流宗教」として韓国人の精神世界に大きな影響を与えたため、東南アジアとは異なる韓国独自の宗教のありようを見せてくれるという評価もある。

 マレーシアの国教は憲法でイスラム教と定められている。人口の61%がイスラム教徒で、仏教徒は19.8%にすぎない。シンガポールでも仏教人口は31%で、キリスト教・イスラム教・道教を合わせた数値(43%)より少ない。東国大仏教学部のハン・ジェヒ教授は「1600年にわたって受け継がれてきた受容性・包容性・開放性を表している事例だ」と指摘した。ソウル大宗教学科のソン・ヘヨン教授は「聖と俗の区分すら無意味だという仏教の教えを体現した存在がニュジンスニムだ」と述べた。

ク・アモ記者、キム・ビョングォン記者

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