韓国軍
「士官学校に志願した私が愚かだった」「脱出は知能順」 韓国軍、昨年だけで幹部9481人が除隊
昨年、韓国軍を去った軍歴5年以上の幹部(将校、准・下士官)の数は9000人を超え、過去最多を記録した。1年間で、第一線の1個師団の兵力(1万人)に相当する数の幹部が軍を去ったのだ。特に「軍の腰」と呼ばれる軍歴5-10年の中間幹部(大尉―中士〈軍曹に相当〉クラス)の離脱が深刻であることが明らかになった。
国家報勲部(省に相当)の統計を見ると、2023年に軍を離れた幹部の数は9481人だった。前年(7639人)より24.1%増えた。2015-22年に7000人台を維持していた数字が、昨年初めて9000人を超えた。このうち軍歴5年以上10年未満の中間幹部の数は、昨年4061人を記録し、全体の43%を占めた。
大尉―中士クラスに該当するこれらの幹部は「軍の腰」だ。陸軍を基準にすると、大尉は一線部隊において中隊長クラスの指揮官もしくは大隊の中心的幕僚を、中士は小隊長クラスの指揮者や副中隊長を務めるケースがほとんど。20-30代のこの中間幹部は、弟分に当たる兵士たちと現場で息を合わせつつ野戦戦闘力の責任を負う、軍の中枢だ。
韓国軍の全兵力の73%を占める陸軍で、昨年自発的に除隊(予備役へ転役)した大尉は411人。19年の271人から1.5倍ほど増えた。中士・上士(曹長に相当)の自発的除隊者数も昨年はそれぞれ920人と480人で、同じ期間におよそ2倍に増えた。
除隊者らは「文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に兵士の月給は大幅に引き上げられ、兵士の人権の重要性は一段と強調された」としつつ「結局幹部は『入れ替わる』だけ、という状況に耐えられなかった」と語った。▲前時代的組織文化▲長い業務時間▲薄給▲低い社会的待遇なども理由に挙げられた。
30歳のキムさんは今年2月に陸軍中士で除隊した後、ジムのトレーナーや配達業をしている。キムさんは「軍の月給の3倍稼いでいる」とし「除隊してよかった」と語った。キムさんは「軍で午後から翌朝8時まで当直に立っても手当は2万ウォン(現在のレートで約2280円。以下同じ)に過ぎないのに、事故が起きたら幹部として『無限責任』を負わなければならなかった」「体も心も(今の方が)ずっと楽」と語った。ソウル市汝矣島のジムのトレーナーをしているナさん(32)も、陸軍特殊部隊の下士官出身だ。ナさんは「除隊した後、しばらく運転代行をして車を走らせていたが、軍隊よりはるかに楽で稼ぎもいい」と語った。
幹部たちは「昼夜を問わず仕事をしているのに月給は法外に低い」と語る。今年の大尉の1号俸は258万ウォン(約29万4000円)。軍幹部らは兵力管理や訓練、当直などで、睡眠時間を除くと全て勤務だと言っても差し支えないが、手当は数万ウォン(1万ウォン=約1140円)の水準だ。ある予備役中士は「過去10年でジャージャー麵の値段は8倍になり、最低時給は7倍になったのに、中士の1号俸月給はせいぜい4倍」と語った。
事実上、最低賃金(時給9860ウォン=約1120円)より低い月給をもらっている幹部らは、文在寅政権時代を経て月給が125万ウォン(約14万3000円、兵長基準)まで上がった兵士にも劣る待遇を受けている、と口をそろえる。衣食住を国が保障する兵士と違い、幹部は食費、住居費などを全て自分の財布から支払わなければならないからだ。
陸軍の前方部隊で服務しているチェ中尉(28)は、こうした劣悪な待遇の問題で長期服務志願を放棄した。チェ中尉は「平日の当直費2万ウォン、週末の当直費4万ウォン(約4560円)もらって夜通し当直した後、休息も保障されない」とし「警察・消防は平日5万ウォン(約5700円)、週末10万ウォン(約1万1400円)もらって2日も休んでる。全く同じように国のために働いているのに、剝奪感を抱く」と語った。
チェ中尉は、軍当局が打ち出す初級幹部住居支援対策の効果を現場で全く体感できない、と語った。昨年結婚したチェ中尉は、軍の官舎を探そうとしたが、待機者があまりにも多かった。軍から家賃のための融資を受けて新居を探そうとしたが、部隊長が許可しなかった。「初級幹部は無条件に軍官舎で統制されなければならない」というスタイルの上官らのマインドに失望したという。チェ中尉は除隊後、鉄鋼やアパレルの企業に応募することを考えている。
陸軍士官学校(陸士)出身のパク大尉(33)も、除隊を決心した。パク大尉は「陸士を出れば少なくとも大領(大佐に相当)までは昇進が保障されるが、結婚もできず、住居環境もめちゃくちゃなのに、階級章を着けて何になるのか」と語った。未婚者のパク大尉は数年にわたり結婚を試みたが、うまくいかなかった。女性たちはいとも簡単に勤務地が移る職業軍人のパク大尉を「下層民」扱いした。ある陸士の先輩の妻は、仕事を辞めてへき地で夫と共に暮らしているうちにうつ病になり、自殺したという。
パク大尉は「こんなことなら、単にお金も適当にもらって生活も楽な兵士として兵役を果たせばよかった」とし「国と民族のために献身したいと、士官学校に志願した私が愚かだった」と語った。
ここ数年、新型コロナや不正給食問題などを経る中で、営内の「兵士の人権」を強調する声は強まった。そんな中、兵士たちと年代が近い20代・30代の初級幹部の業務負担が急増した。一線中隊長が兵士の親から「かわいそうなうちの子が薬を飲んだかどうか写真を撮って確認してほしい」というような要求を受けることが日常化した軍隊になったからだ。
陸士出身のキム大尉(29)は「部隊管理が重要だとしつつ人を消耗品扱いし、退勤後や週末にもひっきりなしに命令を下す上官たちにうんざりした」とし「陸士のエースたちが軍を離れている」と語った。陸士の同期の間では「脱出は知能順」という声もあるという。キム大尉は「昨年、ある師団で勤務していた後輩が自殺し、数週間前には同期が自ら命を絶った」と明かした。
コ・ユチャン記者、チャン・ユン記者、チェ・ナクウォン記者